特別養子縁組あっせん 医療機関として初参入 福田病院(熊本市)理事長に聞く 「病院が手助け、自然の流れ」

「病院があっせんするのが合理的」と主張する福田理事長 拡大

「病院があっせんするのが合理的」と主張する福田理事長

 ■新訳男女 語り合おう■  ●妊婦支えるノウハウある 
 血縁関係のない子どもを戸籍の上で実子とする特別養子縁組。一部の民間業者が、そのあっせんをめぐって養父母から多額の寄付金を集めていたことが問題となる中、熊本市の福田病院が医療機関としては全国で初めて、特別養子縁組のあっせんに名乗りを上げた。運営する医療法人社団・愛育会の福田稠(しげる)理事長に、その意義や今後の展望を聞いた。

 ‐一部の民間業者が多額の寄付金を集めていることをどう思いますか。

 「事業として行えば、予算や経費、ノルマなどが発生します。あっせん数を増やすなどして収益を確保しなくてはならない。命をつなぐ養子縁組にはなじまないと思います」

 ‐医療機関があっせんする意義は?

 「妊娠、出産は病気やけがとは異なる。女性の人生や家族の歴史の一ページ。安全な出産を果たす医学的な責任だけでなく、家庭や経済的に問題を抱えた妊婦をサポートしています。日常業務の一環として、あっせんすれば寄付金は受領しなくてもやっていける。医療機関が手掛けるのが自然な流れです」

 「福田病院には19人の産婦人科医と200人を超える助産師や看護師がおり、年間約3千件の出産を取り扱っています。一方で、助産師や臨床心理士、ソーシャルワーカーの計8人が常駐する窓口で出産から育児の相談を年間1万件以上受けています。妊婦を支えるノウハウは培っており、解決の一つの出口として特別養子縁組のあっせんを加えたにすぎません」

 ‐あっせんで気をつけていることは?

 「本当に赤ちゃんを育てることができないのか、弁護士と児童養護施設園長、元児童相談所課長の3人からなる第三者委員会が客観的に評価します。また、養親に預けられた赤ちゃんが大人になって希望すれば、生みの親の情報を開示するように決めています」

 「ただその際、ブラックボックスの中で行われたとなるとあまりにも切ない。第三者委員会によって客観的に評価がなされた証明として、当時の経済状況や家庭環境、評価の過程などの記録は書類で詳細に残していきたい」

 ‐今後の展望は?

 「14道府県の20施設が養親を紹介し合う協議会を設立しましたが、その中でもモデルとなれるよう、一生懸命に取り組んでいます。養親を紹介したり、縁組した親子をフォローアップしたりするために、全国の医療機関や児童相談所、保健所などと連携を強めたい」

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 ●ワードBOX=特別養子縁組

 血縁関係のない大人と子どもが法律上の親子関係を結ぶ制度。実の親との法的な関係を断ち、戸籍にも「長男」などと記載される。1988年に国が制度化した。家庭裁判所の審判を経て成立する。原則として子どもが6歳未満、育ての親は成人した夫婦で一方は25歳以上‐などの条件がある。このほか、実の親との親族関係が存続して戸籍には「養子」と記される「普通養子縁組」がある。「里親」は、原則18歳未満の子を預かって家庭で育てる制度で、戸籍に変更はない。

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 ●ワードBOX=福田病院の特別養子縁組あっせん

 虐待や養育放棄の対策として医療機関によるあっせんを主導する日本医師会の要請を受けて、5月に開始。2人の乳児を関東地区の養親にあっせんしたことが8月に判明した。

 あっせんを希望した生みの親は出産後1週間、赤ちゃんと寄り添って気持ちが変わらなければ退院。入れ替わりに入院した養母が分娩(ぶんべん)台に横たわる出産に似た形で対面のセレモニーをして約1週間滞在する。寄付金は受け取らず、経費は滞在費約10万円のみ。養親に選ばれるには夫婦とも45歳前後が上限。


=2013/09/14付 西日本新聞朝刊=

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