精神障害者 雇用増には 症状理解し現場で配慮 根深い偏見解消が課題

スシロー野方店で働く精神障害者の男性。仕事にも慣れてきたという 拡大

スシロー野方店で働く精神障害者の男性。仕事にも慣れてきたという

 企業が障害者を雇い入れる動きが進む中、障害の種別で格差が広がっている。軽度の身体・知的障害者に求人が集中するのに対し、精神障害者の就労は依然、困難な状況だ。2018年には一定割合で精神障害者の雇用が義務化されるだけに対策が求められる。

 9月初旬の平日の午後2時すぎ。昼の忙しさから一段落した厨房(ちゅうぼう)内で、黙々と皿洗いをする男性がいた。回転ずしの「スシロー」野方店(福岡市西区)。精神障害者保健福祉手帳を持つ20代の男性は今年4月からこの店で働く。

 日曜‐木曜の正午から午後5時まで、皿洗いとねたの仕込みを手伝う。自分から話し掛けるのが苦手で、作業の内容や手順が分からないときに固まってしまっていたが、同僚の声掛けで乗り越えてきた。「作業量に追いつかなくて戸惑いましたが、少しずつこなせるようになってきました。もっとテキパキできるよう頑張りたい」と意気込む。

 周囲の目も温かい。当時、店長だった川名一寿さん(33)は「障害のあるなしに関係なく、職場のルールを守って仕事をし、休まず勤務してくれれば、受け入れるのが会社の方針。ちゃんとやってくれています。十分な戦力ですよ」と目を細める。

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 厚生労働省によると、2012年に全国の民間企業(従業員56人以上)で働く障害者の数は約38万2千人で、雇用率は1・69%。雇用者数、雇用率とも過去最高を更新したが、精神障害者へのハードルは高い。

 働く障害者のうち、身体は約76%、知的約20%なのに対し、統合失調症やうつ病などの精神障害はわずか約4%にとどまる。新たに求職した障害者約14万8千人の内訳を見ても、身体約46%、精神約34%、知的は約17%で、就職を望みながら果たせない精神障害者が多いことがうかがえる。

 「障害者の特性を知らないことによる不安や偏見は根深い」。障害者の就労支援に取り組む厚労省の外郭団体・福岡障害者職業センターの主幹、川村浩樹さんは精神障害者雇用の“壁”をそう分析する。

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 川村さんはあの涙が忘れられない。

 数年前、精神障害者の付き添いで職場を訪問したときのことだ。「私は障害者と働きたくない!」。売り場の責任者だったパート女性は言い放った。時間を置いて面談すると、この女性は涙ながらに訴えた。「50年間生きてきて障害者と接したことがない。売り上げが伸びず、ノルマを果たさなければいけないのに…」

 不安や偏見がなくなれば障害者雇用は進むと思っていた。しかし、食うか食われるかの最前線では余裕がない。どんな仕事ができ、何が苦手なのか、どんな配慮をした方がよいのか…。「就業後もきめ細かに企業側を支援する必要がある」と川村さんは胸に刻む。

 障害への理解も必要だ。障害者就業・生活支援センター野の花(福岡市)でセンター長を務める古川慎太郎さんは「真面目で責任感が強いので、失敗して自信を失いやすい。慣れない環境で周囲に気遣いしすぎてしまう」と精神障害者が就労面で現れやすい特性を指摘。「少し休みましょう」「体調はどうですか」といった小さな配慮で職場に定着できるという。

 少子高齢化で労働人口が減少する中、多様な人材を生かして成長を目指すダイバーシティ(多様性)経営は喫緊の課題。精神障害者が働きやすい職場環境を整えることは、その一歩となるはずだ。


=2013/09/19付 西日本新聞朝刊=

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