介護施設「みとり」穏やか 過度の延命せず 自然に

「住み慣れたまちで迎える最期」を理念に掲げ、介護する福岡市東区の住宅型有料老人ホーム・すばる 拡大

「住み慣れたまちで迎える最期」を理念に掲げ、介護する福岡市東区の住宅型有料老人ホーム・すばる

 自宅で老後を過ごせなくなった高齢者が暮らす介護施設。「ついのすみか」とも位置づけられるが、意外にも施設で最期を迎えるケースは少ないという。「病院死」が圧倒的な現状に疑問を抱き、施設で穏やかな最期を迎えてほしいと試行錯誤する介護スタッフや医療関係者が増えている。介護施設でのみとりを取材した。

 「とても安らかな時間でした」。福岡市東区の住宅型有料老人ホーム・すばるの施設長、垣野至信(しのぶ)さん(48)は、施設内で初めてみとった女性=当時(84)=の最期を振り返った。

 がんで「余命半年」と診断された女性は昨年2月に入居した。すばるは2011年10月の開設当初から「自然で穏やかな最期を迎えられるように支援」との理念を掲げており、女性をみとる覚悟で受け入れた。

 春には食べるのも、座っているのも難しくなったが、往診と訪問看護を受けて介護を続けた。昨年5月下旬、医師に「家族に連絡を」と告げられた。その夜、女性は駆け付けた子ども、職員たちが見守る中、居室で静かに息を引き取った。

 垣野さんは「死に立ち会うことを恐れるスタッフは多いが、みとりは日常の介護の延長にある」と話す。

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 厚生労働省によると、10年の日本人の死亡場所は「病院」が77・9%、「自宅」が12・6%、「老人ホーム」「介護老人保健施設」などは5%以下だ。

 一般的に、介護施設は入所者が急変すると病院に搬送する。病院は終末期と分かっていても、腹部に穴を開けてチューブで栄養を送る胃ろう、人工呼吸器などの延命治療を施す。

 これに対し、施設でのみとりは「自然死」に近い。食欲が衰え、眠る時間が増え、次第に弱っていく。治療は苦痛の抑制など最低限にして見守る。

 長く救急医療の現場で働き、今は介護施設でみとりを実践する50代の看護師は「管や機械はなく、つながっているのは家族や職員の手だけ。それが安らかな最期ではないでしょうか」と指摘する。

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 厚労省は06年、入所者をみとった介護施設に介護報酬を加算する制度を創設した。それでも、家族とのトラブルや死への立ち会いを恐れる介護職は多く、「治療しない」ことへの医療関係者の抵抗も大きい。延命治療は拒否しても「家族が着くまでは死なせないで」と望む家族も多いという。

 山口県の田中淑子さん(54)の父親=当時(83)=は昨春、福岡市の介護老人福祉施設で逝った。「もう入院は嫌」という父の希望に沿ったが、最期に間に合わず、後悔で泣き崩れた。

 後日、職員たちが父の手を握り「大好きだよ」などと声を掛ける中で息絶えたと聞いた。5年前、入退院を繰り返して病院で死んだ母より遺体がきれいだとも感じた。田中さんは「孤独な死でなかったと、施設に感謝しています」と語る。

 「口から食べられなくなったらどうしますか 『平穏死』のすすめ」の著者で、特別養護老人ホーム「芦花(ろか)ホーム」(東京)の常勤医として約8割を施設でみとってきた石飛幸三さん(77)は「必要以上に延命せず、老衰で死ぬのは自然の摂理。介護・医療関係者も含めて、終末期のみとりの在り方をもっと議論すべきです」と話している。


=2013/09/26付 西日本新聞朝刊=

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