【こんにちは!あかちゃん 第10部】「非婚で産む」ということ<1>悩み抜いて「今でしょ」

ベビーマッサージを教える岩下明央さん。子育ての相談に乗ることも多い 拡大

ベビーマッサージを教える岩下明央さん。子育ての相談に乗ることも多い

 《フィギュアスケート選手の安藤美姫さん(25)が7月、結婚せずに出産したことを公表し、大騒ぎになった。彼女よりも少し上、結婚や出産をより強く意識する30代は、どう感じただろうか》

 「仕事や彼のことをいろいろ考えて決めたんだろうな。そういう生き方もあるよね」。九州南部で暮らす会社員の亜紀さん=仮名=に抵抗感はない。ただ、自身に置き換えると複雑な思いが絡み合う。

 35歳、独身、転勤族。20代ではできなかった仕事ができ、管理職となる40代までの今が、一番やりがいのある時期だと思う。仕事中心の毎日で、妻や母親となった自分をイメージできない。半面、子どもは早く欲しい。「結婚ならいつでもできる。でも産むのは…」

 《妊娠適齢期の存在が注目されるようになったのは最近のことだ。卵子は年齢とともに衰える。妊娠する力は35歳ごろから低下し、40歳を超えると困難になるとされる。30代に入ってからタイムリミットを意識し始める女性は多い》

 亜紀さんは今春、インターネットで調べた関西の病院で卵子を凍結保存した。元気なうちに「お守り」のつもりで残したという。「非婚でも産むかと言われたら正直、分からない。自分だけならいいけれど、保守的な親に申し訳なくて」

 福岡市の自営業、夏子さん(39)=仮名=も結婚が先のつもりでいた。雑誌で卵子が老化することを知り、30代半ばで「そろそろつくらなきゃ」と交際相手(50)を親に紹介する。ところが年齢差と2度の離婚歴から歓迎されなかった。

 子どもはどうしても欲しい。「親の反対で諦めたら後悔する。自分の人生は自分で決めたかった」。勝手に産むのは悪いと思いつつ、実家と距離を置いて非婚の母を選んだ。

 《本年版の厚生労働白書によると、15~39歳の男女で、年齢が上がると妊娠の確率は下がることを「(よく)知らない」人が3割を超えた。情報不足が高齢出産や非婚の選択の一因となっていないだろうか》

 福岡市に精子バンクを運営する男性(33)がいる。精子を不妊に悩む夫婦などに提供している彼の元にも「タイムリミット」に焦る独身女性がやって来る。

 多くは40歳以上で、相談全体の1割ほど。その親も「未婚でもいい。子どもだけでも欲しい」と訴える。切実な思いに触れると「両親がそろっていても不幸な子はいる。強く望まれるなら」と応じることもある。ただ、ほとんどの場合は妊娠に至らないという。

 「今、中絶したら二度と産めないんじゃないか」。熊本市のベビーマッサージ講師、岩下明央(みお)さん(39)は6年前をそう振り返る。

 離婚後に交際していた男性の子を身ごもったのは、互いに別れを考えていたころ。たとえ結婚しても長続きしそうにない。「1人で産むから」。電話の向こうで母親は動揺し、縁を切るとまで言った。それでも2人目となる子を産んだ。

 決意が揺るがなかったのには理由がある。20代の結婚がうまくいかなかったこと。流産を経験したこと。命を失う苦しみは二度と味わいたくなかった。

 24歳で結婚し、長男を出産。同世代は仕事に遊びに忙しい。結婚と同時に退職した明央さんは、社会から切り離されたような孤立感にさいなまれた。さらに夫は機嫌が悪いと暴力を振るった。「私の人生、このまま終わるのかな…」。自殺を考えるほど思い詰めた。

 長男を守りたい一心で離婚したものの「子どもにとっていいパパなら、いるにこしたことはない」と思う。それでも非婚を決意した人がいれば伝えたい。「ここに仲間がいるよ」と。

 ●生き方の選択 子の権利は

 連載にあたって、人に会うたびに問い掛けた。「非婚で産むのはアリか、ナシか」。答えは、9割以上が「今の時代はアリ」。ただし、自分や身内が実行するとなると、多くの人が考え込んだ。どこか引っかかるのはなぜだろう。

 担当記者の私も、36歳で分岐点に立ち、自らに問うた。いつか子育てをしたいが、仕事に打ち込める環境は捨てがたく、結婚には及び腰。では、先に産んでしまうのはどうか。

 すると一気に不安が押し寄せる。仕事と両立できるか、親を介護するとなったら…。最も気にかかるのは、わが子が「婚外子」という立場をどう感じるかだ。もしも既に私の中にもう一つの命があったら、もっと難しい問答になる。

 2011年の婚外子の出生割合は2・2%。米国41%、フランス56%など欧米と比べると極端に少ない。

 生き方を自由に選べる権利と、等しく守られるべき子どもの権利と…。「非婚で産む」ということを、社会はどう受け止めたらいいのか、皆さんと一緒に考えたい。


=2013/10/01付 西日本新聞朝刊=

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