【こんにちは!あかちゃん 第10部】「非婚で産む」ということ<2>女性の自己責任ですか

 婚外子であることを示す「嫡出でない子」に印を付けて出生届を書き終えた。父親の欄は白いまま。息子に申し訳ない気持ちがこみ上げてきた。

 《事実婚を含め、婚姻関係にないカップルの子どもは戸籍上「嫡出でない子」に分類される。男性が認知しないと、戸籍の父親欄には何も記載されない。「嫡」には「正統」という意味があり、嫡出子か否かを分けることが偏見を助長するとの意見もある》

 連載1回目に登場した熊本市のベビーマッサージ講師、岩下明央(みお)さん(39)は交際相手と別れる間際に妊娠が判明した。結婚しないまま出産し「子どもが大きくなって戸籍を見たとき、自分のルーツが空欄になっているのは、すごくショックなんじゃないかな」と自分を責めた。同時に、男性は何も負わずに逃げることができるのだなと思った。父親として最低限の責任も果たさずに。

 「非婚で産む」ということを「女性の自己責任」と言う人もいる。「それは結婚しないなら堕(お)ろせということですか」。岩下さんは「男性も妊娠できれば、おなかの命と向き合う気持ちが分かるのに」とも思う。

 《子どもは女性だけではできない。一方の当事者である男性は「責任」をどう考えているのだろう》

 アルバイトをしながら音楽活動を続ける浩一さん(26)=仮名=は、彼女との結婚を意識しつつも、収入が安定せず踏み出せない。もしも今、子どもができたら…。音楽は絶対に諦められない。中絶という選択肢も頭に浮かぶだろう。

 「でも、好きな人との子どもだし、できたことは互いの責任だし、堕ろすことは彼女も傷つける。何とか結婚する」。結婚という形をとらなかったとしても、男性は認知して経済的にも助けるべきだと思う。「子どもには父親を知る権利がある。それに自分と彼女の関係は、子どもには責任がないんだから」

 会社員の太さん(39)=仮名=は大学時代、既に働いていた彼女から妊娠を告げられた。求めに応じて学生結婚する。振り返れば「親に話せば大変なことになる。彼女が自分で堕ろすと決めてくれたら」というのが本音だった気がする。

 最初の覚悟があいまいだったからなのか、新しい生活は長く続かなかった。

 その後、太さんは再婚し、2児の父親となった。この春、妻が長期入院して「ひとり親」を経験する。子どもたちを保育所に送って仕事、迎えに行って食事、風呂、寝かしつける。目の回るような生活だった。「妻の退院までだから頑張れたけれど、1人で働きながら育てるのは時間的、経済的にも本当に大変」と痛感した。

 その大変さを、非婚で産む女性の多くは、最初から覚悟している。岩下さんも「自分の力で生きていく」と決めてベビーマッサージの資格を取った。

 それでも開業までは苦しい時期を過ごした。請求書を並べてどれから支払うか悩み、電気を止められたこともあった。米が尽きて麺ばかり食べた日もある。覚悟の上だったとはいえ、経済的に自立する大変さは想像以上だった。

 《子どもの5割以上が婚外子のスウェーデンでは、出生時に法律上の父親を決め、両親の関係が壊れても共同で子どもを養育する義務がある。生活習慣や家族観、宗教観が異なるので単純には比較できないが、日本では非婚を選んだ女性側に負担が重くのしかかる現実がある》

 ●非婚で出産 「抵抗ない」38.8%

 一般社団法人・日本家族計画協会が2012年、19~49歳の男女3000人を対象に行った意識調査によると、結婚していないカップルが子どもをもつことに対する抵抗感が「全くない」と答えた人は14.0%。「あまりない」も含めると38.8%だった。分析した同協会クリニック所長の北村邦夫さんは「ことのほか受容度が高くて驚いた」と話している。

 一方で「抵抗感が大いにある」は16.2%、「少しある」は43.5%と計6割が否定的。また、人工中絶を経験した理由については、男女とも「相手と結婚していないから」がトップだった。国の統計では、第1子の4分の1が、妊娠した後に結婚する「できちゃった婚」で生まれており、「結婚して産む」という伝統的家族観もなお根強い。

=2013/10/02付 西日本新聞朝刊=

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