【こんにちは!あかちゃん 第10部】「非婚で産む」ということ<3>同じ「ひとり親」なのに

博美さんが福岡市議会に請願した寡婦控除の「みなし適用」はかなわなかった 拡大

博美さんが福岡市議会に請願した寡婦控除の「みなし適用」はかなわなかった

 《結婚しないまま出産、子育てをすることに抵抗感のある人は、なお少なくない。家族に反対され、孤立してしまう非婚のシングルマザーもいる》

 大みそか、ついに陣痛が始まった。病院に電話をすると「もう少し様子を見て」。心細い夜を過ごして1月1日、痛みの間隔が短くなってきた。大きなおなかと荷物を抱え、病院へ向かう。たった1人で。

 連載1回目に登場した福岡市の夏子さん(39)=仮名=は、両親の反対で結婚を諦めたものの、子どもだけは欲しくて実家に黙って出産に臨んでいた。

 彼とも別れていた。ぎくしゃくし始めたのは妊娠が分かってから。彼からの生活費は途絶え、身重で働くこともできず、預金が底をつくと時計やバッグを質に入れた。すぐに行き詰まり、カードローンで借金を繰り返して自己破産した。

 病室でも1人で一夜を明かし、1月2日、ようやく娘が産声を上げた。きれいに体を拭かれたわが子を抱く。「お母さんになったんだな…」。喜びがじわじわと湧き上がってきた。

 退院後、仕事を探した。「生きていくために」と必死だった。しかし、シングルマザーの条件に合う就職口はなかなか見つからず、国の職業訓練を受講すると受け取れる生活給付金で食いつないだ。娘が3歳になった最近、やっと収入が安定してきたという。

 《非婚、離婚にかかわらず、ひとり親の経済状況は厳しい。厚生労働省の2011年度調査では、児童のいる世帯の平均年収658万円に対し、父子世帯は455万円、母子は半分以下の291万円。さらに非婚は所得控除を受けられない制度上の“差別”もある》

 「結婚しているか、いないかでこんなに扱いが違うなんて」。福岡市の博美さん(40代)=仮名=は婚姻届を出さずに子どもを産んだ自分が「少数派」であることを、あらためて実感した。息子(4)の保育料は月額1万6400円。同じ条件でも、離婚歴のあるひとり親家庭は「寡婦(夫)控除」を受けて無料になる。

 保育料は収入に応じて市町村が決める。寡婦控除が適用されない非婚は収入が高く見積もられ、保育料も高くなる。福岡市の場合、年収200万円で3歳以上の子をもつ非婚の家庭は、保育料と所得税、市民税で年間19万円余り多く支払うことになる。国民健康保険料や公営住宅の家賃にも同じく影響する。

 パート勤めの博美さんは年収200万円足らずで、うち約1割が保育料に消える。「その分を教育費として貯蓄したり習い事をさせたりして、息子の能力を伸ばすために使えたら」と思う。

 《日本弁護士連合会は1月、総務相などに対して、非婚の世帯にも寡婦控除を「みなし適用」するよう求めた要望書を提出した。現行制度は非婚のシングルマザーやその子を差別し、法の下の平等に反すると訴えている》

 みなし適用による保育料の減免については、熊本市が「離婚・死別と非婚で差がつくのは公平でない」と本年度から始めた。ただ、全国でもまだ十数市町しか実施していないとされる。

 博美さんは福岡市でも導入されるよう、市民団体を通じて市議会に請願した。8月に出た回答は継続審査、つまり保留。法の問題は国が対応すべきだというのが理由だった。だが、審査した議員の一人は「非公開の議論では『非婚での出産は控えてほしい』という意見もあり、制度にのっとって結婚しないことへの偏見も一部あった」と明かす。

 博美さんは「非婚のシングルマザーは日々の生活で精いっぱい。困っていても時間やエネルギーがなく、家庭事情もさらしたくないから声を上げづらい」と話す。公の場に訴えるのには相当の覚悟がいる。その声の重みは、自治体にどう響いているだろうか。

=2013/10/03付 西日本新聞朝刊=

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