福岡県大牟田市 徘徊 優しく見守る町 模擬訓練10年 市民1000人以上参加

福岡県大牟田市であった徘徊模擬訓練。散歩中の女性は徘徊者役の男性に優しく対応した 拡大

福岡県大牟田市であった徘徊模擬訓練。散歩中の女性は徘徊者役の男性に優しく対応した

 地域で認知症の高齢者を見守ろうと、福岡県大牟田市が取り組む「徘徊(はいかい)SOSネットワーク模擬訓練」。年に1度の開催で、9月で10回を重ねた。今年は市民千人以上が参加し、岩手県や京都府など全国から約140人が視察に訪れた。大牟田市が目指す「安心して徘徊できる町」を歩いた。

 9月下旬、秋晴れの日曜日。市の中央部にある白川小学校区の訓練に、約150人が集まった。黄色いビニール傘を持った徘徊者役と同行者3、4人ずつの26グループが地域を歩く。すれ違った住民に徘徊者役が声を掛ける。

 「帰り道が分からんごとなったとですが…」。散歩中の女性(67)は「分かる所まで一緒に行きますよ」と優しい。自宅から出てきた独居女性は「『老人行く道、わが道じゃ』って言うでしょ。いつか自分に跳ね返ってくることです」と親切に対応した。中には「私はいいです」と断る人もいたが、多くは徘徊者に親切だ。視察した京都府亀岡市の保健師(46)は「これほど大規模な訓練を全市で同時進行しているのは驚き」。岩手県高齢者総合支援センターの土屋ひろみさん(51)は「地域住民の訓練はもちろん、介護関係者と顔見知りになる機会としても素晴らしい」と感心した。

 大牟田市の高齢化率は31・1%(今年4月現在)。認知症による徘徊が課題となり、2004年に駛馬(はやめ)南地区の住民が模擬訓練を開始。10年には市内全21小学校区に広がった。訓練の想定や方法、事前準備は各校区で趣向を凝らす。

 10年間、訓練に関わる大牟田市認知症ライフサポート研究会で代表を務める大谷るみ子さん(55)は「模擬訓練はやりやすいけど、目的を見失いがちになる」と指摘する。市が目指すのはあくまでも「安心して徘徊できる町」だ。

 このため、年1回の模擬訓練以外にも、認知症の人を支えるまちづくりの推進者となる「認知症コーディネーター」の養成、子どもたちに認知症への理解を深めてもらう「絵本教室」、公民館での「もの忘れ予防・相談検診」など、地道な活動も続けている。大谷さんは「認知症になっても住み慣れた街で安心して暮らせる地域コミュニティーを再構築したい」と強調した。

=2013/10/10付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ