避難所運営や相談窓口… 被災地支援に“女性の視点”を 震災後、深刻化するDV被害

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東日本大震災後の女性が置かれている状況について話す八幡悦子さん

段ボールで仕切られただけの避難所=2011年6月、宮城県気仙沼市

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 東日本大震災から2年7カ月。避難所ではプライバシーへの配慮が少なく、多くの女性がストレスを抱えた。被災地では今、配偶者や恋人への暴力(ドメスティックバイオレンス=DV)が深刻化しているという。震災後の女性たちがどんな悩みを抱え、どんな支援を必要としているのか。9月に福岡市であった講演会「震災後の女性と子どもたち」(アジア女性センター主催)を通して考えてみた。

 講師は仙台市のNPO法人「ハーティ仙台」代表理事の八幡悦子さん(61)。ハーティ仙台は、DVや性暴力の被害者支援団体で、電話や面接による相談、シェルター運営のほか、月に2回、DVの被害女性同士が語り合う場を設けるなどの活動を続けている。八幡さんは津波で大きな被害に遭った宮城県石巻市の出身。避難所訪問を続けるうち“女性の視点”での支援が必要と感じて「みやぎジョネット」も立ち上げた。

 震災から約1カ月後、石巻のある避難所では、100人以上が生活しているのに仕切りはなかった。被災者は自分が寝るスペースの頭部分に荷物を積み重ね、隣の人との境界にしていた。避難所のリーダーの男性が「私たちは家族、仕切りはいりませんね」と演説し賛同を求めたと聞いた。

 段ボールを貼り合わせただけの「更衣室」は利用しづらいため、多くの女性が毛布を体にかけてその場で着替えていた。授乳室も、汚れた体を拭くために使えるスペースもない。避難所は外部のボランティアが管理していたが、そこで生活していた親戚の女性は「遠慮して意見は出せない」と話していたという。

 八幡さんは「生活支援を担当していない第三者が避難所の運営をチェックし、投書箱のような匿名で意見を出せる仕組みをつくる」「女性支援員による面接調査や相談を行う」などの必要性を指摘した。

 震災から時間がたつにつれて表面化してきたのが、DV被害の深刻化だ。2012年の被災3県の県警による統計では、宮城に1856件(前年比33%増)、福島に840件(64%増)、岩手に298件(2%減)の相談が寄せられている。

 八幡さんによると、震災によって激変した環境やストレスによって、もともとあったDVがひどくなったケースが多いという。

 別居中だった夫が津波で家と仕事を失って戻り、DVが深刻化した(40代女性)▽津波で家を失い、中古住宅に転居したものの、夫は環境の変化になじめず、家にこもって当たり散らすようになった(60代女性)▽実家、両親を津波で失った弔慰金を夫が浪費している(30代女性)▽震災後に夫のアルコール依存が進み、性暴力、生活費を入れない「経済的DV」が悪化した(50代女性)‐などの相談があったという。

 弔慰金は世帯主に一括で支払われるため、別居中の女性は受け取れない。失業、生活環境の激変、一時的な収入などによってアルコールやギャンブルへの依存が増加していることも問題となっているという。また、家族を失った女性の1人暮らし、母子家庭に対してのセクハラやストーカーも表面化している。

 震災後、実際にDVから離脱した女性もいる。長年被害に遭っていたのに我慢するしかないと考えていたが「震災がなければこのままの生活を続けていた」と答えたケースが多いという。

 八幡さんは「まだまだ広報、啓発活動が足りない。男女共同参画の拠点施設を整備して関連書籍を充実させ、市民対象のDV講座や女性による面接相談を継続していく必要がある」と話していた。

 ◇男女共同参画の視点から、災害時にどのような支援が必要かについては、東日本大震災女性支援ネットワーク(東京)が「こんな支援が欲しかった! 現場に学ぶ、女性と多様なニーズに配慮した災害支援事例集」としてホームページで無料公開している。


=2013/10/12付 西日本新聞朝刊=

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