【御三家筆頭 尾張徳川家の至宝】<6完>国宝初音の調度 絆と道徳観を映し

国宝「初音蒔絵貝桶」(江戸時代・1639年、徳川美術館蔵)。展示期間は11月10日まで 拡大

国宝「初音蒔絵貝桶」(江戸時代・1639年、徳川美術館蔵)。展示期間は11月10日まで

 国宝「初音の調度」は、徳川三代将軍家光の長女である千代姫が、1639(寛永16)年、尾張徳川家二代光友に嫁ぐ折に制作された婚礼調度で「源氏物語」の「初音」の帖を意匠していることから「初音の調度」と呼ばれています。

 当時の婚礼調度には、上流階級の女性が、日常の暮らしに必要とする道具のほとんどが含まれていました。「初音の調度」にも大きな書棚から、直径3センチに満たない小さな黛の容器まで47種のお道具が伝わっています。そして器物の表面はすべて、金銀の蒔絵(まきえ)で華やかに飾られ、葵(あおい)の御紋が散らされています。

 ところで、おめでたい婚礼には縁起物がつきものですね。なかでも代表的なのは一対の貝桶(かいおけ)でしょう。これは六角形に作られた丈の高い箱で台に載せられ、赤い丸ひもが掛けられています。なかには、貝覆(かいおおい)(貝合(かいあわせ))に使う360個の貝がぎっしりと収められています。

 貝覆は、離ればなれになった蛤(はまぐり)の殻を、貝の内側に描かれた源氏絵や花鳥文様などを手がかりに元の組み合わせに戻していく、というなんともみやびやかな遊技です。殻がぴったりと合うのは同一の個体だけ、という二枚貝の特性が生かされているわけですが、昔の人は、ここに「貞女は二夫にまみえず」という道徳観を重ねていました。

 貝桶は数ある婚礼調度のなかでも、とりわけ重要な器物ですが、そこには、夫婦の絆という特別な意味があったのです。

(九州国立博物館主任研究員・川畑憲子)

 =おわり


=2013/10/19付 西日本新聞朝刊=

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