“日本のモンサンミシェル”人気 参拝者絶えず 長崎・壱岐の小島神社

潮が引いて陸続きとなった小島神社。参道の先に鳥居が見える 拡大

潮が引いて陸続きとなった小島神社。参道の先に鳥居が見える

男嶽神社に奉納された、おびただしい数の石像 御朱印を記す月讀神社の神職

 神社仏閣を巡って御朱印を集める人々が、ひそかに注目する島がある。玄界灘沖に浮かぶ長崎県壱岐市。中国の史書・魏志倭人伝に「一支国(いきこく)」と記された南北17キロ、東西15キロのこの島には、小さなほこらも含めると千を超える神社があるとも言われる。観光ガイド歴36年の伊佐藤(いさふじ)由紀子さん(58)に見どころを紹介してもらった。

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 「最も人気なのは『日本のモンサンミシェル』こと小島神社です」

 モンサンミシェルは、干潮時のみ道が現れて渡ることができ「海の修道院」とも呼ばれる。フランスが誇る世界遺産が壱岐に? あぜ道を歩いて海辺に出ると、なるほど、小さな島へ150メートルの参道が延びていた。風がやむと水面に雲が映り込み、いっそう神秘的な雰囲気を漂わせる。「潮の状態によって参道の形が変わるんです。毎日違った表情が見られます」

 古事記では、日本の国土をつくり、八百万の神々を生んだのは伊邪那岐(いざなぎ)、伊邪那美(いざなみ)夫婦と語られている。その伊邪那美を祭っているのが小島神社だ。

 参道を渡り、ぐるりと島を半周して急斜面を登る。頂上に、こぢんまりとした社殿があった。神職は常駐していないが、「インスタ映えするパワースポット」として参拝者が絶えない。「参拝できるのは潮が満ちるまでの2時間。潮見表で調べて来てくださいね」

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 小島神社に並んで人気なのは島の北東部、男岳頂上にある男嶽(おんだけ)神社。山全体が信仰対象で、明治時代まで入山が許されず、人々は麓から参拝していたという。

 ここは古事記の天孫降臨に登場する猿田彦が祭られている。天から降りた神の道案内をしたことで「導きの神」と親しまれている。宮司の吉野理さん(36)は「願いが成就するとサルの石像を奉納する習わしで、300体ほどあります」と語る。石像はこけむしたり風雨にさらされたりして、原形が分からない物もあり、歴史を感じさせる。

 壱岐には磁力を帯びた岩をご神体とする神社がいくつかある。男嶽神社もその一つ。「ここでコンパスは使えません」。伊佐藤さんに促されて方位磁針を取り出すと、確かに針はあらぬ方向を指していた。

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 島中央部の月讀(つきよみ)神社は、日本書紀でその歴史が語られている。

 顕宗3年(487年)に月神のお告げを受け、壱岐から分霊するかたちで京都に月讀神社が創建された。これによって中央に神道が根付いたと考えられている。

 「だから厳かな空気感があるんですね」。東京から来た会社員男性(34)は、島内の神社8カ所を巡り、ここが一番の気に入ったと話す。「4年前から集めた御朱印は2千ほど。壱岐は神社が多くて、また御朱印帳が増えました」

 島内には神社本庁の登録神社だけでも150あり、神社跡や民家の一角のほこらに至るまで、丁寧に祭られている。その理由として伊佐藤さんは、壱岐の「風土」を挙げる。

 厳しい自然環境に加え、元寇(げんこう)をはじめ度重なる大陸からの侵攻。「自分たちの力で何ともならない状況を、神に祈るしかなかったのではないでしょうか」

 平成の終わりに、古事記や日本書紀ゆかりの神社を訪ね、古代日本の歴史へと思いをはせてみませんか。

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 壱岐市 島内の郷ノ浦、勝本、芦辺、石田の4町が合併して2004年に誕生。人口約2万7千人。博多港(福岡市)から芦辺港、郷ノ浦港まで高速船で1時間5~10分、フェリーで2時間10~20分。唐津東港(佐賀県唐津市)からのフェリーもあり、印通寺港まで1時間40分。長崎空港(長崎県大村市)から壱岐空港まで航空機で約30分。1日2便が就航している。

 神社巡りはレンタカーが便利。神職が不在の神社も多いため、御朱印を求める際は各神社に事前連絡を。ウェブサイト「壱岐を知り神社を巡る旅」などで連絡先を調べられる。