(4)高齢者避難、地域で備える 能古島の施設訓練

離島の特別養護老人ホーム火災を想定した訓練では、消防団員や施設職員がシーツを担架代わりに救助活動を行った=20日午前、福岡市西区能古 拡大

離島の特別養護老人ホーム火災を想定した訓練では、消防団員や施設職員がシーツを担架代わりに救助活動を行った=20日午前、福岡市西区能古

 福岡市西区の能古島の特別養護老人ホーム「能古清和園」で20日、火災時に入所者を避難させる訓練があった。煙で視界が利かないケースが多いため、参加したホーム職員は目隠しをして臨んだが、ほとんどが出口にたどり着けなかった。博多湾に浮かぶ島で災害が起きたら、消防隊が船で到着するまでに20~30分かかる。高齢者をいかに救うか-。参加者は10人が死亡した安部整形外科(博多区)の火災を思い起こし、地域全体で「備える」ことの大切さをかみしめた。
 
 訓練には、ホーム職員約20人と島の消防団員16人、市消防局の隊員約40人が参加した。2階浴室から夜間に出火し、入所者8人が重軽症を負ったという想定で、入所者に見立てた消防隊員を毛布にくるみ、床を引きずるようにして搬送した。人口約700人の島は3割超が65歳以上とされる。分団の消防車は小型1台しかなく、大きな火災が発生すれば、市消防局は消防車をフェリーに乗せて島に向かうしかない。

 同ホームの入所者約50人は、寝たきりや認知症など要介護度の高い人がほとんど。夜間の当直職員は4人にとどまる。訓練では、煙が立ちこめた場面を体験するため、目隠しをした職員が姿勢を低くして施設内の移動を試みた。慣れているはずの場所でも椅子などの障害物にぶつかったり、逆方向に進んだりして、ほとんどが出口に着けない。消防隊員は「出口付近の人が大声で誘導して」と助言した。

 安部整形外科の火災では、犠牲者全員が一酸化炭素中毒だった。短時間のうちに煙に巻かれたとみられる。能古清和園にはスプリンクラーが設置されているものの、島に消防隊が到着するまでの時間を考えると、参加者の胸には最悪の事態がよぎった。施設長の植高誠一郎さん(36)は「普段の訓練を形骸化させることなく、防火態勢を再点検したい」と話す。

 警戒が必要なのは夜間だけではない。能古消防分団には現在、30人の団員がいるが、大半が島外に働きに出るため、昼間は4~5人しか活動できない。このため、分団は毎年1回、全住民に島内の消火設備の場所を教え、自主的な消火活動を呼び掛けている。井上猛分団長(59)は「大きな火災が起きれば、島ぐるみで対応しないといけない。最後の頼みの綱は地域の助け合い」と語った。

 ◆城南区の団地でぼや 隣人夫婦が83歳誘導

 19日深夜、福岡市・天神から約3キロの団地で、消防車11台が出動するぼやがあった。「安部整形外科の件で火災の恐ろしさは分かっていたつもりだが、まさか自分たちが住む団地から火が出るとは…」。住民はそう口をそろえた。都会のぼや騒ぎから見えたものは-。

 約700世帯が暮らす別府(べふ)団地(同市城南区)に、けたたましい非常ベルの音が響いた。3階で1人暮らしの女性(83)がドアを開けると、鼻をつく異臭が漂っていた。

 「同じ棟の5階で出火したようです。一緒に逃げましょう」。隣に住む20代の夫婦が、女性に声を掛けてくれた。煙を吸わないようマスクを差し出し、足が悪い女性の腕を取り誘導してくれた。「日頃からご近所づきあいをしていて本当に良かった」と女性。入居した13年前から、回覧板を回すときなどに自分から話しかけていたという。

 一方、団地の隣人関係は希薄だったようだ。表札を出す世帯はごくわずか。出火した部屋の隣に住む会社員女性(46)は「隣に誰が何人住んでいるかすら知らなかった」と打ち明けた。団地に住む会社員男性(42)は「家族を避難させることで頭がいっぱいで、周囲のお年寄りにまで気が回らなかった」と反省した。

 市地域活動アドバイザーの十時裕(とときひろし)さん(61)は「災害弱者の救助では、隣人など小さなコミュニティーが要になる。あすはわが身という危機感を持ち、日頃からあいさつなどで地域との関わりを積み重ねることが大切だ」と指摘した。

=2013/10/21付 西日本新聞朝刊=

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