(5)防火、避難 垣根越え 施設火災続いた長崎は今

長崎市のグループホーム「なごみ」の2階に今年、増設された渡り廊下。各グループホームは利用者の安全を守るため模索を続けている 拡大

長崎市のグループホーム「なごみ」の2階に今年、増設された渡り廊下。各グループホームは利用者の安全を守るため模索を続けている

 高齢者10人が命を落とした福岡市博多区の安部整形外科の火災。同様に一度に多数の高齢者が亡くなる火災が、長崎県では2度起こった。2006年に大村市で7人、今年2月に長崎市で5人が死亡したグループホーム火災。繰り返された悲劇を教訓に、現場はどんな取り組みを進めているのか。長崎の「その後」を取材した。

 5人が犠牲になった長崎市東山手町のグループホーム「ベルハウス東山手」。77~90歳の認知症高齢者が一酸化炭素中毒などで死亡した。市建築部はその3年前、防火扉の不備を把握していたが、福祉部、消防局との情報共有が徹底されず、是正されないままだった。

 安部整形外科の火災でも、防火扉の点検をめぐり福岡市の部局間で情報が共有されていなかった。こうした「縦割り」の弊害をどう改めるか。

 長崎市は5月、関係した3部局で福祉関連施設運営連携会議を設置した。部署ごとに連絡票を作り、施設の相談内容や指導項目を他部署に伝え、情報を共有する。8月からはグループホームへの合同立ち入り調査も開始。施設運営や避難経路から天井裏の配線まで調べる。連携会議の吉峯悦子委員長(福祉部理事)は「管轄外の法令も学べ、職員の防災意識と理解が高まる効果もあった」。

 また、安部整形外科と同様に、初期消火に有効なスプリンクラーの未設置が惨事の大きな要因だった。このため、長崎市は6月、国の動きに先駆けて、新設されるグループホームなどを対象に、面積にかかわらず設置を義務づけた。9月にはグループホームに月1回の防災訓練も義務化した。

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 夜間の火災で高齢者をどう避難させるかも、施設に共通の悩みだ。18人が入所する長崎市琴海村松町のグループホーム「なごみ」は06年、2階の入居者を隣の福祉施設の敷地に安全に避難させる渡り廊下を設置、今年に入りもう一つ増設した。

 大村市協和町のグループホーム「あんのん」は同年、地域住民や入居者の家族と運営推進会議を結成した。夜間の当直職員は認知症高齢者9人に対し1人。地域住民に施設運営へ参加してもらうだけでなく、いざというときの避難にも手を貸してもらう狙いだ。4月に開かれた会議。住民から「施設を囲むフェンスの一部を取り払い、災害時の逃げ道をつくっては」と提案があった。今、効果的な撤去の仕方を検討中だ。

 あんのんの白仁田敏史代表(58)は強調する。「博多の火災は高齢者施設の危機管理の重要性を浮き彫りにした。グループホーム側も、地域の祭りや敬老会に積極的に参加するなどして、地域住民に入所者の顔や施設の構造を知ってもらう努力が必要だ」

 命を守るための模索が、地域ぐるみで続いていく。

=2013/10/22付 西日本新聞朝刊=

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