(9)高齢者の街、備えの一歩 北九州・八幡東区

斜面地に建設された住宅にたどり着くには、何段もある階段を上らなくてはならない=北九州市八幡東区東丸山町 拡大

斜面地に建設された住宅にたどり着くには、何段もある階段を上らなくてはならない=北九州市八幡東区東丸山町

 高齢者10人が死亡した福岡市博多区の医院火災では、犠牲者全員が短時間で煙に巻かれて亡くなった。高齢者をいかに早く避難させるかは、医療機関や福祉施設だけでなく、65歳以上の住民が50%を超える「限界集落」でも切実な課題だ。その一つであり、斜面地の「消火困難地」でもある北九州市八幡東区東丸山町地区では、住民それぞれが気遣い合いながら自衛策を積み重ねている。
 
 標高100メートルほどの山に、古い木造住宅が張り付くようにして軒を連ねる。「坂の街」という形容がぴったりだ。

 「博多の火事を見て、人ごとじゃないと怖くなった」。1人暮らしの女性(87)は打ち明けた。足腰が弱く、麓まで100段以上の階段の上り下りはできない。食料や日用品は息子らが交代で届けてくれるが、火災が起きれば自力避難は困難だ。

 女性が住む集落には20世帯40人が暮らすが、うち22人が高齢者。高齢化率は55%に達する。女性と同じ独居高齢者が多い。空き家が目立ち、延焼の不安もつきまとう。

 戦前から「鉄都」として栄えた北九州市では、製鉄所の社員らの住宅が山の斜面に続々と建てられた。車社会の到来前に開発されたため道幅が狭く、消防車が入れない消火困難地が残る。

 女性は言う。「今まで大きな火事がなかったから、無事だっただけ…」。都市に潜む「防災の盲点」がここにある。

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 市は2000~12年度、東丸山町地区周辺に消防車が入れるよう道路整備などに約54億円を投じた。昨年12月末に民家が全焼した火災では、この道路のおかげで消防車が入れ、延焼を食い止めた。ただ、市内の道路の大半は手付かずで、消火困難地が10カ所以上残る。

 同地区で高齢者の移送ボランティアに励む宮川幸夫さん(62)は「若い人が集落に入って来ず、2人がかりで車椅子を抱える人手が足りない。災害時に頼れる人が少なすぎる」と語る。市消防局によると、今年1~8月に火事で亡くなった17人中、8人が高齢者だった。

 地区では、失火への注意喚起と近隣の助け合いに自衛の道を求めている。毎月20日に行っている「火の用心」の夜回りに加え、数年前からは緊急時に避難所の小学校へ向かう前に町内会ごとにいったん集まって逃げ遅れた人がいないか確認する訓練を始めた。

 住居周辺の空き家の庭掃除も自発的に始まった。落ち葉をほうきで集めていた男性(77)が言った。「少しでも燃える物をなくそうと思ってね。お年寄りは逃げ遅れやすいから」

 ◆避難経路決めておいて

 斜面地の都市計画に詳しい九州大大学院の志賀勉准教授(建築計画)の話 長崎など斜面地の住宅街は全国にあり、高齢化が進む。平地への移転は費用や愛着の面で困難。消防車が入りにくい場所を点検し、避難経路を決めておくなど、日ごろの備えが重要だ。

=2013/10/26付 西日本新聞朝刊=

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