【人の縁の物語】<39>逝き方 元気なうちに 家族へエンディングノート

田村寿美さんが思いをしたためたエンディングノート 拡大

田村寿美さんが思いをしたためたエンディングノート

 自分らしい最期を迎えるために、元気なうちに老い支度を始めたい-。その一歩となるのが、望む介護や延命治療、葬儀のあり方などをまとめる「エンディングノート」。意思を書き残すことは、見送る家族の悲しみを和らげる一助にもなるという。

 「葬儀でまず困るのは誰を呼ぶか。呼んでほしい人の連絡先を書いておきましょう」「既に戒名がある人はいませんか。家族が知らずに別の戒名を付けて、後悔した例もありますよ」。講師の話に出席者は大きくうなずいてメモを取った。

 福岡市のNPO法人「ふるさと安心サポート九州」が2カ月に1回、市内で開くエンディングノート作りセミナー。3年前にスタートし、高齢者を中心に10人前後が参加する。東日本大震災後は50代も増えた。

 事務局長の中橋優さん(38)は「震災で多くの人が自分もいつどうなるか分からないと感じました。今や死を語ることはタブーではありません」と話す。高齢化が進んで老後について考える時間が十分にあること、核家族や子どものいない世帯が増えたことも「終活」ブームの一因とみる。

 福岡市の田村寿美さん(62)も遺影を撮影し、葬儀社の会員となるなど終活を進める。エンディングノートは今年6月に長女の幸子さん(37)に勧められて書いた。

 ノート作りは「人生の棚卸し」とも呼ばれる。田村さんも、どう生きて来たかを書き起こすことで自身を整理できたという。夫の転勤で転々とし、いろんな仕事を経験して、娘3人を育てた。「私って結構、頑張ってきたじゃない」。あらためてそう思えた。

 将来については、大病を患った場合は病名や余命を「教えてほしい」に丸印を付けた。残り時間を有効に使いたいから。延命治療は「望まない」とした。「介護やお金で迷惑をかけたくないことを伝えておきたかった。自分の父とはそんな話をしたことがなく、どうしてほしいのか分からないままでした」

 分かる範囲でノートを仕上げた田村さんだが、家族へのメッセージ欄は白いまま。元気に過ごしているせいか、何を書くかまだ固まっていない。幸子さんは「メッセージこそ一番書いてほしい。母と語り合えなくなったとき、支えになると思うんです」と話す。

 カフェ形式で終活の相談に応じ、情報発信をしている福岡市の「快活ライフ」社長、中村龍彦さん(37)は「今の思いを形にしておくことが大事。変わったら何度も書き直せばいいんです」とアドバイスする。

 中村さんはエンディングノートを通じて、母親(66)の「これからしたいこと」が友人との東京旅行だと知った。元気なうちにかなえてあげたいと思っている。「老後に向き合うことは、今どう生きるかを考えること。それは残される家族のためでもあります」。本人の気持ちに添った見送り方ができれば、家族は悲しみの中にも光を見いだせるはずだ。


=2013/10/29付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ