【道徳教育を考える】情報モラル 悩んで学んで 熊本の小学校 モデル授業 大人の押しつけでなく

携帯電話やインターネットの適切な利用に向け、6年生を対象に情報モラル教育の授業に取り組む戸田俊文校長 拡大

携帯電話やインターネットの適切な利用に向け、6年生を対象に情報モラル教育の授業に取り組む戸田俊文校長

 携帯電話やインターネットを利用する児童生徒が増える中、情報をやりとりする場合のルールやマナー、利点と危険性などを学ぶ「情報モラル教育」を求める声が強まっている。学校現場ばかりでなく、ネット上でのいじめ問題も深刻化しており、その必要性は高まるばかりだ。いわば、電脳社会での道徳教育だが、教材や指導法はまだ確立されておらず、現場では模索が続く。熊本県玉名市の伊倉小学校で先日、モデル授業があった。

 6年生約30人を対象に10日、授業に取り組んだのは戸田俊文校長(56)。めあて(学習目標)として「インターネットなどの情報とのつき合い方を考えよう」と黒板に記した。

 戸田校長は自宅にパソコン十数台を保有する。教材づくりなどのために買い足していったものだが、少しおどけて「先生はオタクです」と自室の画像を紹介。「みんなはパソコンやケータイをどんなときに使う?」と問い掛けた。

 女子から「分からないことを調べる」との声が上がる一方で、男子からは「ゲームの攻略法や裏技」。続けて男子がつぶやく。「デタラメもあるけどね」

 「おっ、すごいな」。戸田校長は、そのつぶやきを黄色のチョークで記した後、物語仕立ての動画映像を映し出した。

 〈高校生の兄は彼女と交際を始めたが、思うように盛り上がらない。見かねた中学生の妹は、お笑いグループのブログを紹介。ブログに掲載されていた公演情報から、兄は彼女をライブに誘う。2人は楽しみに会場を訪れたが、あたりは閑散と。ブログを確かめると、来月開催のおわび情報が掲載されていた〉

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 「では、どうすればよかったのでしょう?」。戸田校長の問い掛けは続く。

 「(準備作業があるだろうから)前日に会場に行って、確認しておく」(事前、現地確認)

 「芸人の事務所に電話する」(公的機関への確認、複数情報の裏付け)

 「本当かと思ってみる」(否定視点での検証)

 児童たちも頭では分かっているのだ。戸田校長は、ネット犯罪被害者の約9割を未成年が占めるデータなどを示し、「知らない人からのメールには、ブレーキをかけてください」「親や先生に必ず相談してください」と訴えた。

 前任の熊本県教委教育政策課で指導主事を務めていた戸田校長は、情報モラル教材の作成に携わった。小中高校生の3人の子どもがいる家族を想定し、
「電子掲示板の正しい使い方」「メールでコミュニケーションするときに大切なことは何か」など八つのモデル授業を策定し、冊子にまとめた。この日の授業は、その一つ「情報の信ぴょう性」をテーマにしたものだった。

 教材づくりに当たっては「ネットやケータイの危険性ばかりを強調せず、プラスを含めた光と影の両面を提示し、正しく使う」という視点に心掛けた。

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 授業の途中、会員制交流サイト「フェイスブック」、携帯向けソーシャルゲーム、無料通信アプリ「LINE」などについて「知っている人?」と問い掛けると、ほぼ全員が挙手。子どもたちの現実は、教材の想定をはるかに上回っているようだった。

 例えば、電子掲示板で実名を挙げ、特定の子どもを中傷したり、関係を突然遮断したりする「ネットいじめ」。その温床となっている「学校裏サイト」(児童生徒が非公式に開設した学校関連の掲示板)は巧妙化し、実態がよりつかみにくくなっている。

 電脳時代の情報モラル教育に必要な視点は何か。戸田校長は「授業や子どもたちの学びを深めるため、『価値葛藤』が大切だ。大人が考える『正しさ』を一方的に教え、諭すのではなく、多様な考え方の中で、子どもたちが迷いながら、考えを導き出す教育が求められている」と話した。

 ●子どものスマホ「不安」71%

 内閣府が9月に発表した「子供の安全に関する世論調査」によると、子どもがスマートフォン(多機能携帯電話)を利用することに「不安を感じる」と回答した人が71・9%。スマホ利用に不安を感じる理由(複数回答)では「ウェブサイトやアプリ(応用ソフト)の利用で、他者とのトラブルや犯罪被害に巻き込まれる恐れが高くなる」(72・4%)▽「子どもに悪影響を与える情報を閲覧する恐れが高くなる」(69・0%)-などが多かった。ベネッセ教育総合研究所(東京)の調査によると、母親がスマホを使っている2歳児の22・1%が「ほとんど毎日」スマホで遊んでいる。画面に触ると音が出る乳幼児向けアプリ(応用ソフト)や、スマホで見られるアニメ動画などが普及したためとみられる。

=2013/10/29付 西日本新聞朝刊=

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