プレ⾦にプレ酒でラッキー

木村 貴之

 「ラッキーヱビス」をご存じだろうか。ヱビスとは、プレミアムビールに分類されるサッポロビール(東京)のブランド「ヱビスビール」。商品名通り、恵⽐寿様が1尾の⼤鯛を抱えたデザインのラベルでおなじみだが、恵⽐寿様の脇の⿂籠(びく)から別に尾びれがのぞき、⼤鯛が2尾あるのがラッキーヱビスだ。瓶、⽸とも数百本に1本しかないレアもので、空になってもオークションでは⾼値で取り引きされているようだ。

 先⽇、仕事帰りに⽴ち寄った居酒屋でラッキーヱビスに出合った。この⽇は、⽉末の⾦曜⽇に仕事を早く切り上げる「プレミアムフライデー(プレ⾦)」が始まった2⽉24⽇。プレ⾦とは無縁の深夜に仕事を終え、せめてハナキン(花の⾦曜⽇)とプレミアム気分を味わおうと、帰宅途中にヱビスビールで晩酌をすることに。カウンターで独り、砂肝ピーマン炒めを肴(さかな)にちびちび飲んでいると、なじみの店員がそっと私のビール瓶の隣にヱビスをもう1本。既に飲み⼲された空瓶だったが、これがラッキーヱビスだった。

 ラッキーヱビスを⾒たのはこの時が初めて。他の客が飲んだ空瓶でも、ちょっぴりラッキーな気分になり、店員の粋な計らいにもほっこりするものだ。時計の針は既に午前様。スマートフォンで2つ並んだビール瓶を記念に撮り、独りニヤニヤしながらうんちくを調べていたら、再びびっくり。なんとこの⽇(2⽉25⽇)は「ヱビスの⽇」。1890(明治23)年に「恵⽐寿ビール」が発売されたのにちなんだ記念⽇だったのだ。

 ⾸都圏で働く男⼥を対象とした⺠間調査によると、職場でプレ⾦が実施されたり、奨励されたりした⼈は計10・5%で、実際に早く帰った⼈はわずか3・7%だったとか。実施・奨励された職場でも「早く帰るつもりでも帰れなかった」⼈が挙げていた理由が切ない。「仕事が終わらなかった」「後⽇、仕事のしわ寄せが来る気がした」「職場の周囲の⽬が気になった」…。今後、プレ⾦が全国的にどれだけ浸透し、定着するか。先読みは難しそうだ。

 政府や経済団体が推進するプレ⾦は、就業時間の短縮で働き⽅改⾰や消費喚起を促すのが狙い。私⾃⾝はどうか。プレミアムフライデーに、悔し紛れのプレミアムビールで独り酒となったが、ささやかな幸福感を味わえた。つまり消費に満⾜できたわけだ。それもこれも、「ラッキーヱビス」を演出してくれた店員の気遣いあればこそ。時間に余裕を作ることで、⼼にも余裕ができれば、プレ⾦は成功なのだろう。

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