減る「粉せっけん」 肌や環境に優しいが 溶けにくさ難点

店頭に並ぶ洗濯用の粉せっけん。国内の販売量は減り続けているが根強い愛用者もいる=福岡市早良区のグリーンコープ生協藤崎店 拡大

店頭に並ぶ洗濯用の粉せっけん。国内の販売量は減り続けているが根強い愛用者もいる=福岡市早良区のグリーンコープ生協藤崎店

 洗濯用の粉せっけんの販売量が減少している。動植物の油脂から作る粉せっけんは「環境に優しい」として1970年代に使用を進める市民運動が盛り上がった。しかし、石油などの化学合成で作る合成洗剤の改良が進み、環境への悪影響は軽減された。「エコ商品」として一世を風靡(ふうび)した粉せっけんは、使い勝手が合成洗剤に劣ることもあり、今は敬遠されているようだ。

 福岡市早良区のグリーンコープ生協藤崎店。商品棚に洗濯用粉せっけんが並ぶ。「年配の方は根強く買って行かれますが、若い方は少ないですね」と店長の西村久美子さんは話す。

 日本石鹸(せっけん)洗剤工業会(東京)によると、洗濯用粉せっけん(固形も含む)の販売量は87年に5万3千トンだったが、2001年は2万1千トンと6割減。02年以降は粉せっけん単独の統計は取られておらず、工業会は「今は年間1万5千トンほどだろう」と推測する。

 一方、合成洗剤は粉末と液体を合わせ、1987年が72万3千トン、昨年も74万2千トンに増加。最近は低価格で1回の使用量が少ない液体の合成洗剤が主流だ。

 粉せっけんは環境に優しいだけでなく、皮脂汚れを落とす力は合成洗剤より強い。しかし、手間がかかるのがネックだ。粉せっけんを製造する「シャボン玉石けん」(北九州市)の石けんアドバイザー、前田博昭さんは(1)溶けにくい(2)適量でないと汚れが落ちにくい(3)せっけんかすが衣服に残る‐などの短所を認める。

 ただ、手間暇掛ければ威力を発揮する。「粉せっけんを、ぬるま湯でよく溶かして洗濯機に入れる方法があります。せっけんかすは、すすぎの際にクエン酸の粉末を入れると取り除けます」と前田さん。

 粉せっけんは、硬度(カルシウム、マグネシウムイオンの割合)が高い水では、せっけんかすが大量に出るため、硬度の低い軟水を作って洗濯する人もいるという。

 化学物質の安全性を試験する研究機関に勤める福岡県久留米市の田嶋晴彦さん(58)=薬学博士=は、粉せっけんを愛用。粉せっけんと合成洗剤の長所と短所を客観的に研究している。

 田嶋さんは、独立行政法人・製品評価技術基盤機構(NITE)が、合成洗剤に含まれる汚れを落とす主成分である界面活性剤の一部について「川や湖に流れ込んだ濃度が高い場合、藻類や魚類に強い有毒性が認められる」と指摘している点を懸念。「下水道が未整備の地域の小さな河川では、界面活性剤の分解前に生物に影響を与える恐れがある。できれば粉せっけんを使ってほしい」と訴える。

 また、NITEの試験では、高い濃度の合成洗剤で手荒れなどが起きたとの結果もある。田嶋さんは「アトピー性皮膚炎や乾燥肌など、肌の弱い人は、粉せっけんを使ってみては。症状が改善するかもしれません」と勧める。

 ●合成洗剤改良し水質への影響減

 1960~70年代の合成洗剤は、界面活性剤の側鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)が分解されにくく、生活排水による河川・湖の水質汚濁の環境問題が起きた。滋賀県の琵琶湖では赤潮が発生。「合成洗剤に含まれるリンが富栄養化を促す」とリンが含有されない粉せっけん使用を訴える市民運動が盛り上がった。粉せっけんの界面活性剤成分の脂肪酸ナトリウムは濃度が薄まると働きを失い、分解も早いため、環境への影響が小さい。合成洗剤の界面活性剤にもより分解しやすいものや毒性が低いものが開発された。80年代半ばには、リンも使われなくなり、環境に与える影響は大きく改善された。


=2013/11/06付 西日本新聞朝刊=

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