じんわり 温かさ感じて 映画「ペコロスの母に会いに行く」で初主演 赤木春恵さん(89)

 認知症の母親と介護する息子の日常を描いた映画「ペコロスの母に会いに行く」が16日、全国で公開される。認知症の母みつえを演じたのは、女優の赤木春恵さん(89)。ギネス記録に匹敵するとされる89歳での映画初主演で、迫真の演技を見せた。卒寿を目前にした今も現役で活躍する赤木さんに、老いや介護について聞いた。

 -表情やしぐさにみつえさんの言葉にならない思いがにじんでいました。認知症の人を演じる心構えは。

 「認知症役は3回目。85歳で亡くなった実母も認知症だったので、参考になる体験はたくさんありました。それよりも原作漫画(同名)のみつえさんがあまりにかわいいので、とにかく『かわいいおばあちゃん』を心掛けました。(原作者の)岡野雄一さんに『母にそっくりでびっくりした』と言われたときはうれしかったです」

 -厚生労働省の推計では65歳以上の7人に1人が認知症。認知症や介護について感じたことは。

 「私は母を介護したので同性として理解できる部分もありました。でも、これは母と息子の物語。みつえさんが汚した下着を隠す場面もありました。母なんだけど、女性を男性である息子が介護することの難しさを感じました」

 -「認知症」「介護」と深刻なテーマですが、涙も笑いもある映画。原作同様、人それぞれの多様な介護の在り方を考えさせます。

 「私は認知症の母を自宅で介護していましたが、火を付けたマッチを室内に放置して火事の危険があり、私の仕事も忙しかったので施設に預けました。入所前夜、最後まで世話をできない切なさで、布団をかぶって泣きました」

 「でも、数日後に会いに行くと、入浴も散髪もしていただき、おやつを前にニコニコ笑うかわいいおばあちゃんがいた。預けて良かった、なぜもっと早く預けなかったかと思いました」

 「いろいろな家庭や事情、葛藤があります。『会いに行く』ことも介護という原作のメッセージに共感します。同じような境遇の方に見ていただき、じんわりする温かさを感じてほしい」

 -ご自身は乳がんで左乳房を全摘出し、一昨年は舞台からの引退を表明した。「老い」を潔く受け入れているように見えます。

 「やり直しがきかない舞台は、迷惑をかけたくないから88歳が区切りと決めていました。映像作品も、足が悪くて正座できないから時代劇は無理。せりふが多くても、激しい動きがあっても無理。それでも(女優として)需要があり、身の丈に合っていればお受けする。需要がなければ、それを受け入れるだけです」

 「今、移動は車椅子。(ロケ地の)長崎は坂の町だから大変で、スタッフ4人がかりで抱えてくれました。補聴器もつけているから『大きな声で話して』ってお願いする。それは隠すことではないし、年を取れば後ろ指を指されることでもないでしょう。今の私が自然です」

 ▼あかぎ・はるえ 旧満州出身。1940年に松竹に入社し、俳優活動を開始。ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」「3年B組金八先生」をはじめ、映画は200本以上に出演。

    ×      ×

 ▼映画「ペコロスの母に会いに行く」 原作は、長崎市在住の岡野雄一さんによる同名エッセー漫画(西日本新聞社)。岡野さんを岩松了さん、若き日のみつえさんを原田貴和子さんが演じた。森崎東監督。ロケ地の長崎県では9日から先行上映。全国公開は16日。配給・東風=03(5919)1542。


=2013/11/07付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ