アジア“最強”スタートアップ地帯の熱気 最大級イベント「Meet Taipei」と牛肉麺

 台湾・台北市で15〜17日に開かれた大規模なスタートアップ企業イベント「Meet Taipei」。新たなビジネスにチャレンジする現地企業のトップは何を重視し、どこを目指しているのか。旅行客向けのオンライン通訳アプリを展開する「訳遊科技」(台北市大同区)の游士逸(Jimmy Yiu)社長に聞いた。


 福岡への観光客が年々伸びている台湾を訪ねてきた。目的は、15〜17日にかけて台北市で開かれた台湾最大規模のスタートアップイベント「2018 Meet Taipei」。全土で24日に投開票される統一地方選挙が熱を帯びる中、それ以上に「沸騰する」と言ってもよさそうな台湾のスタートアップ熱を肌で感じた。

 会場は台北市の中心部に近い場所にある大型の展覧会場「争艶館」。21カ国の27都市の450社が集まり、畳一畳ほどの小さなブースから、数百人を収容するイベントスペースまでびっしりと埋まった。取材も現地台湾はもちろん、香港、タイ、韓国、シンガポールからも記者が来場。qBizはなんと「日的媒体(日本メディア)」では唯一の存在。主催側の招待を受けて取材した。

 マリンメッセ福岡の1階展示スペースより1回り狭い空間はお祭り状態。客はビジネスマンだけではなく、お年寄りも、幼子を連れた家族連れもいる。高校生の集団は、イノベーションを学ぶ授業の一環で訪れていた。

 企業イベントにもかかわらず、来場者は3日間で6万人。センサーとIoTを組み合わせることで農業の効率を高めるシステムや、折りたたみ式3Dプリンター、ドライバー同士の道路でのトラブル解消に役立つディスプレーなど、思いも寄らぬアイデアで各社が個性を競っている。

 日本からも9社が参加。大阪市の「WEFABRIK(ウイファブリック)」は衣類の在庫を抱えた企業と、それを必要とする企業をマッチングさせる事業で、昨年8月のサービス開始後、すでに3000社がサービスを活用した。会場のブースにいた同社の福井岳洋セールスマネジャーは「突然、米国の投資家が『とても興味がある』と声をかけてきて驚いた」と笑う。

 通販事業を中心にコンサルティングなども手掛ける福岡市の「さくらフォレスト」は自社ブランドの化粧品や健康食品を展示。役員の西尾和剛さんは「Eコマースは人口に比例するビジネスなので市場を広げたい。場所を狙うよりも、こういうイベントでいいパートナーとの偶然の出会いを大事にしたい」と期待した。

 今年で5回目となったこのイベントを主催したのは、台湾でIT、スタートアップ系のビジネスを扱い、最も影響力を持つと言われる専門メディア「数位時代(Business Next)」。 陳素蘭社長は「台湾外からの参加が年々増えている。台湾が(スタートアップの拠点として)魅力的な場所だという理解が広がってきているのだろう」と話す。

 大企業も参加している。台湾最大手の通信会社の中華電信をはじめ、LINE、アリババ、サムソンの名前も。大手にとっても、スタートアップ企業とのコラボレーションは成長に欠かせない時代になったことの証左かもしれない。

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 米国・ワシントンの調査期間「グローバル起業家精神・開発研究所(GEDI)=Global Entrepreneurship and Development Institute)= https://thegedi.org/ =」は毎年、「世界起業精神指数」を発表している。この調査で、常に世界でも最上位クラスに位置するのが台湾だ。元々ハイテク産業が盛んなことも背景にあるだろう。

 2018年は少し順位を下げたとはいえ137カ国・地域中18位。ちなみに日本は28位。調査は指数の内訳も公開しており、台湾のデータが興味深い。「起業に対する(政府機関の)姿勢」が22位、起業する「能力」が24位で、全体順位よりも低い。しかし「野心」が11位で、順位を大幅に引き上げているのだ。

 「創業の地」として突き進む台湾だが、そこには課題もある。Business Nextの陳社長は「どうやって台湾の企業が外に出て、世界に注目されるかがとても重要。人口2300万人という台湾の存在感は決して大きくなく、優秀な人材を流失させず、逆に他国から獲得する取り組みが不可欠だ」と懸念する。それがそのまま、このイベントを主催する最大の動機でもある。

 一連の陳社長の言葉に、福岡の状況を重ねた。全国の政令市で最も開業率が高い福岡は、日本国内で「創業の街」としての地位を不動のものにしている。海外の日本拠点に福岡が選ばれるケースも増えている。

 九州は日本の中で最も地理的に台湾に近い。スタートアップでの台湾と九州の関係は、今後どのようになるべきだろうか。

 「台湾から見ると日本は一つの大きな国。『やっぱり最初は東京との関係から』となる。でもこの1、2年間、確かに福岡市と台湾の交流は進んでいる。今後はもっと交流を深めるべきだ」。陳社長は期待を込めた。

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 実は、台湾を訪れたのは40歳を超えたこの年になって初めて。取材を終え、食事を取ろうと入った 料理店は壁が少しすすけた、歴史を重ねた店だった。 系列の別の店は日本人観光客にも人気らしいが、こちらはラフないでたちの地元の方々がはしを動かしている。

 八角の香りが効いたコシのある牛肉麺をいただき、代金を払おうとすると、机の脇にタブレットが。ディスプレーに浮かんでいたのは<歓迎使用Uber Eats>の文字。自動車配車サービスのUberが手掛けるフードデリバリーサービスだ。「台北では古い店でも普通に使っていますよ」――。

 台北では「スタートアップ」や「イノベーション」という言葉が一部の人たちだけのものではなく、自然な風景になりつつあるのかもしれない。そうなると、街の魅力はもっと増すだろう。

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