「背伸びしない」からこその魅力 だざいふ遊園地よ、永遠なれ

 台風も去り、行楽シーズン真っ盛り。福岡一、気軽に出かけられる遊園地といえば太宰府市の「だざいふ遊園地」だろう。前に「かしいかえん」について書いたが、こちらも忘れてはいけない。

 2005年、九州国立博物館の開館に合わせたリニューアルで名前が変わったが、私を含む福岡ネイティブの中には今もかつての名前「だざいふえん」で呼ぶ人が多い。個人的にも子ども時代に訪れ、高校3年の学年遠足でも太宰府天満宮での合格祈願とセットで同園を利用した。今でも時折、家族で出かける。

 開園は61年前。ド派手なアトラクションや作り込まれた園内演出があるわけではないし、人気のマスコットキャラがいるわけでもない。それでも一ファンとして断言するが、秘められた魅力は底なしだ。

 まず、ロケーションにしびれる。太宰府天満宮の境内を本殿に向かわず右に曲がる。「曲水の宴」が催される庭を横目にどんどん歩くと、梅の枝葉に隠れていた入場門が、すーっと眼前に現れる(最終ページの動画をご参照ください)。

 太鼓橋や心字池、如水の井戸や文書館などの厳かな雰囲気から一転して、鮮やかなピンクのお城と、七色の「だざいふ遊園地」の丸い文字。そのギャップに子どもたちのテンションも急上昇する。

 そのままゲートをくぐり、園内に駆け込みたくなるところだが…、ん?ちょっと待ってほしい。正門左側に立つ、見覚えのある君は――。そう、NHK「おかあさんといっしょ」で1982年4月5日から92年10月3日にかけて放送された着ぐるみの人形劇「にこにこ、ぷん」の「じゃじゃ丸」ではないか。

 じゃじゃ丸のことは当然知らない子どもたちだが、次々に「かわいい」と駆け寄る。そして後ろから付いてきた、ちょうど「その世代」の大人たちが「おおお、じゃじゃ丸!」と興奮する。

 なぜここに?「昔は園内で、お金を入れると動く自動遊具として稼働していました」と営業主担当の簾内寛さん(57)が教えてくれた。古くなって動かなくなったが、「前の部長が『かわいいけん』と飾るようにした」という。
 園のはじまりは「御神忌1050年大祭」が催された1952年。「天神様をまつる境内に、子どもも楽しめる場所を」と境内にブランコなどの遊具を備えた「子供天国」が誕生。その後の57年、西鉄などの出資で「だざいふえん」として開園した。園内の一角に、大祭記念児童遊園の碑が残されている。

 散策していつも思うのは、その急な傾斜。現在制作が進む西日本鉄道の110年史の編さんに携わり、5月に私が執筆した反省だらけの「かしいかえん」コラムでもお世話になった近代史研究家の益田啓一郎さんによると、丘陵地にあった段々畑を7段の平地に整えたという。

 1957年の開業当時から唯一運行を続けるのが、こども汽車「弁慶号」。還暦を迎えた昨年、車体はちゃんちゃんこにちなんだ赤色に塗られた。

 この弁慶号は、記念すべき開園を伝える本紙記事にも登場していた。1957年10月14日付の西日本新聞の福岡市内版にはこうある。

 <営業をはじめた太宰府の“だざいふえん”は行楽日和に恵まれて初日からどっと三千人余のかわいいお客を迎えた。ブランコやスベリ台も子供たちで鈴なり、呼び物の子供汽車にはずらりと行列するにぎわい。>

 「本当に、ずらーっと並んでましたよ」。開園2カ月前、17歳で入社し、47年余にわたって園で働いた今村光江さん(78)は振り返る。独学で経理を覚えて園の堅実経営に務め「生き字引」と呼ばれてきた。

 その弁慶号の線路の土手は従業員たちで手作り。今も残る小さな鉄橋にハスを浮かべて風情を出し、トンネルの内部を虹色に塗ったという。

 来園者のピークは1974年度の64万人。今村さんは「一番多いときは、幼稚園から中学校まで、34校の生徒が同時に来たときがあった」と証言する。従業員は子どもたちの頭をかき分けて進まなければならなかった。

 娯楽の多様化や少子化を背景に、来園者は2004年には13万人まで減った。天候に左右されるのも遊園地の宿命。「天気が悪くなってお客さんが来なくて、仕込んだカレーがたくさん余ってしまって。社員が自分たちでお金を払って、1週間食べ続けたこともあるんですよ」と今村さんは笑う。近年はリニューアル効果もあり客足は少し上向き。17年度は15万人に増えた。
 ジェットコースターもゴーカートも「九州初導入」したという輝かしい実績を持つ、だざいふ遊園地。実は7月の西日本豪雨で一部ののり面が崩れ、土砂が入ってしまった人気アトラクション「バズーカ砲」は今、休止中。自然豊かな場所に造られた施設ならではの試練もある。

 入り口の「じゃじゃ丸」に限らず、園内にはレトロな雰囲気の人形や遊具が盛りだくさん。確か少し前までは、1990年に福岡県で開催された「とびうめ国体」のマスコット「フッくん」もいた。パンダやキリンなどのふかふかした電動乗り物も健在。バブル期に登場し、すでにメーカーのサポートが終了した「ワニワニパニック2」は、今も屋内遊具コーナーの最奥部でしっかり現役として稼働している。

 特筆すべきは、今年5月にリニューアルしたメリーゴーラウンド。新調したにもかかわらず、使い込まれた風格がある。実はこれ、昨年末に閉園したあの人気スポットから受け継がれたという。そして旧メリーゴーラウンドにあったカボチャの馬車などは、今も園内で休憩用ベンチとして活用されている。

 だざいふ遊園地の温かな雰囲気の理由は、「一つ一つの遊具に特別な思い出があります」という今村さんの話に集約される。業者任せではなく、従業員自らがゴーカートのコースを整備し、そろばんをはじいてリフトの設計図をつくり、プールを掘って塗った。完成するごとに、お祝いをした。園を愛した働き手一人一人の心が、遊具に宿っているのだろう。

 「このごろ行くと、けっこうお客さんがいて安心しました。背伸びしないで、自然を大事にして、小さな子どもさんに喜んでいただくところであってほしいですね」

 背伸びしないで――。まさに、それこそが強み。子どもにとっての「楽しい」は今も昔も変わらない。遊具に「世界最大」「国内最速」がなくても、VRを駆使していなくても、だざいふ遊園地はどこよりも明るい笑顔を作り出すことができる。

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