「かぶりもの」から見た福岡(後) ギンギラ太陽's・大塚ムネトさん 第5次流通戦争?街は連続ドラマだらけ 

 福岡市を拠点に活動する劇団「ギンギラ太陽’s」。1997年2月の旗揚げ以来、かぶりものでビルや乗り物を演じ、福岡の街を描いてきた。都心の大規模再開発や相次ぎオープンする新施設で激変する福岡。主宰の大塚ムネトさんに、かぶりものを通して見える街の風景と、今後の展望を聞いた。

「ららぽーと」どんなキャラに

 ―今年、福岡市にはいくつもビッグニュースが生まれた。青果市場跡地(博多区)に「ららぽーと」の進出が決まり、11月にはホークスタウンモール跡地(中央区)に「マークイズ」がオープンする。出店ラッシュで、福岡は「第5次流通戦争」と言ってもいい状況だ。

 大塚 最初は天神に凝縮したエリアで始まった福岡の流通戦争は、どんどん戦いが広がっている。「5次」ともなると、福岡だけの規模じゃなくなる。アジア、九州、関西をどう巻き込むか…。そのスケール感は、流通を定点観測している自分としてはわくわくしているが、現場は大変だろうなあとも思う。

 気になるのは、もう流通業界では「あの手この手」が出尽くした感がある。「コト消費」の次には、どんな手があるんだろう。

 ―天神以西最大のショッピングモールになるマークイズは「まいにちも、とっておきも」を掲げている。

 大塚 イメージ的には、キャナルシティのようなイメージかなという感じだけど、もちろんまだ想像はつかない。あのときのキャナルは、「良いところ取り」という感じだった。映画館がありおしゃれな店があり、ダイエーが頑張っていた。そして雨に濡れなかった。

 マークイズはホークスタウンの反省を踏まえて、普段使いとハレの合体。西新とあわせて、「西の中心」をもう一度目指すのかなと思っている。ホークスタウンの再開発は、まだ「(福岡の)第三極」になりうるのではという感じがある。

 ―その一方で、ららぽーとは商圏がはっきり分からないという指摘もある。

 大塚 (入居する)キッザニアは強いけれど、平日や、近所の普段使いにとってどうなるのか楽しみ。休みの近所の人は毎日行くのかな…その辺を「分かってて進出する」ららぽーとを、こちらは楽しみに待ち構えている。

 ―ギンギラの舞台では、この2施設はどんなキャラになりそうか。

 大塚 うーん…、できあがってからですね。東京や大阪に同じような施設はあるけど、そのまま持ってきてうまくいくわけじゃない、というのが福岡。持ってきて成功するものも、ダメなものもある。「コト消費」という言葉でさえ、すでにおなじみになりすぎている。

 「どうなる?」という予想は、施設が少ないときは先回りできたが、今は舞台よりも現実の動きの方がすごい。ときどき、自分が現実に追いついていない感じさえする。

コア解体、「新たな伝説」に期待

 ―福岡市が掲げる市中心部の再開発「天神ビッグバン」。福岡の街が大きく変わる時代になった。公演でも「天神ビッグバン!バン!バン!スペシャル」とシリーズ化し、最新作では解体が決まった天神コアを描いた。

 大塚 今回はコアを急きょ主役にした「解体と共に去りぬ」だった。でも、調べると1976年にオープンしたコアは「コト消費」のかたまりだった。既存のデパートにないものをやろうと、フロアぶちぬきの書店、そしてクッキング教室…。ちゃんと新しいもので挑んだんだなあと。

 昭和の天神コア誕生を振り返る中で、キーワードは繰り返すし、永遠ではないことをあらためて感じる。だから「コト消費」も、永遠ではないと思う。残酷だけれど、僕らは慣れてしまう。

 未来を見るために過去を見るのはとても大事だと思う。今は博多が「コト消費」で復活を遂げて、全国でもそれがキーワードになっている。今、自分は天神コアが掲げた「コト消費」がどういう変遷をたどったのかを調べている。そこを見ていくと、コト消費の未来が見えるのかもしれない。

 ―大事なキャラである天神コアとの別れに、寂しさはあるか。

 大塚 天神は空襲で一度焼け野原になって、戦後に都心界ができて「天神を輝く街に」と一致団結した。焼け跡に商店街ができ、それがコアになった。

 コアは福ビルと一緒に建て替えられる。その福ビルが臨む天神交差点には岩田屋(現在のパルコ本館)と天神ビルがあり、天神発展の中心地だった。そしてこれから、その場所にある福ビルやコアが、次の天神の発展を支えるきっかけになる。

 だからコアも「なくなる」のではなく、「生まれ変わる」。寂しいというよりは、「伝説が受け継がれているなあ」という感じが強い。

「平成元年のワクワク」再び

 ―福岡は今後も成長を続けそうだ。

 大塚 ギンギラは、感覚的にみんなが思っていることを言語化してキャラ化することから始まり、取材で見つけた心引かれるエピソードを集めて、それを一つの物語につむぐ。その間口は広く、どこかに好きな「キャラ」がいるはず。そして奥行きが深い。それがギンギラの魅力だと思う。

 それはそれだけ、間口が広くて奥行きが深い福岡という街そのものに魅力があることにほかならない。その街で毎日、ただ通勤して帰るだけ、買い物するだけ、というのはもったいない。福岡は「かみごたえ」のある、面白い街。味わい方を知ると、おいしいところがたくさんある。

 地下鉄三号線だってそう。天神をスルーする人が増えるのか、博多から人の流れを取るのか。それ一つとっても面白い。

 今はちょうど、平成元年の(ソラリアプラザやイムズなどが)ぞくぞく出てきたわくわく感に似ている。

 ―次のテーマは。

 大塚 ずっと街を追いかけてきた。ネットが出てきたときは、どうしようと悩む中で交通など違うジャンルにいった。今は、変に予定を立てるよりも、追いかける。こっちがボールを待つ感じになっている。街が大きく動く物語を追いかけるのが楽しくてしょうがない。

福岡は「偶然と必然」の街

 ―20年を経て、福岡以外から、街の物語の制作依頼も来るようになった。これから挑戦したいことは。

 大塚 まず大きいのは、「許してもらったからには、しっかりいつまでも福岡の街のことを語っていくぞ」、という思い。

 20年間続けると、物語の中にしか存在しないキャラクターも増えてきた。中洲の玉屋もそうだし、スペースワールドもそこに入った。上書きされて現実世界では見えなくなっても、物語の中ではしっかり生き続ける。

 そして、物語が終わっても、街は続いている。だからずっと追いかけている。ちょうど人気シリーズの連続ドラマを何本も抱えている感じ。

 予想できない物語をずっと書かせてもらっている僕自身、1人のファンとしてその展開を追いかけさせてもらっている。だから20年やっても、全然飽きない。福岡は「偶然と必然が絶妙に入り交じった街」だと思う。

 

※メモ「天神流通戦争」

「天神流通戦争」
九州最大の商業集積地・天神で繰り広げられてきた競争は「天神流通戦争」と呼ばれ、長年にわたり繰り返されてきた。博多大丸の天神移転と天神地下街開業(1975、76年)が「第1次」。ソラリアプラザやイムズなどのファッションビルの開業(89年)が「第2次」。福岡三越の開業は「第3次」に当たる。そして11年には博多阪急やアミュプラザ博多が開業し、16年にはキッテ博多が続いた。流通戦争は「天神VS博多」に形を変えて、「第4次」に突入している。

 

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