開園80周年の「かしいかえん」 小さな幸せ育む遊園地に残る”謎”

 大型連休中、「かしいかえん」に出かけた。

 最初に行ったのは4、5歳のころ。保育園の遠足だった。小学校の高学年のときには、親に小遣いをもらい、友だちと恐る恐る電車を乗り継いで出かけた。それからずいぶん間が空いて6年前、親として自分の子どもを連れていった。そして今回、記憶の上では4回目の入園だ。

 普段はあまり意識しないが、福岡市内で唯一の遊園地でもある。そこへのお出かけは「コンパクトシティ」を標榜する福岡を実感した1日だった。

 好天に恵まれた休日。西区の自宅を午前10時すぎに出発。福岡都市高速道路を走り、午前11時前にはもう東区にある園内に入れた。駐車場が園に隣接していて、少し出遅れたにもかかわらず、数台の余裕がある。

 園内は家族連れで大にぎわいだった。フリーパスのチケット売場には長蛇の列ができていたが、それでも20分ほどで購入。「たくさん乗る」という長女だけフリーパスで、私と妻と長男は「のりもの券」での都度払いにした。混雑していたが、1時間待ちといったようなアトラクションはなく、長女は10回以上パスを利用した。午後3時半に園を後にして、帰宅しても午後4時。それからさらに子どもたちと自宅で遊び、夕食は近所のラーメン店へ。午後9時には就寝した。

 昨年夏、東京ディズニーランド(TDL)に家族で行ったときは「戦い」だった。まず駐車場から入園口まで根気強く並ぶ。さらに、アトラクションの内容と待ち時間を考慮して、最も効率の良い周り方を考えなくてはならない。パレード見物は幸運にも、よく見える場所を確保できたが、緊張の連続だった。自宅に戻ったときには精根尽き果てていた。もちろん、とても楽しい一日ではあったが。

 非日常の「夢の国」を冒険するTDL。比べるのは筋違いではあるけど、かしいかえんは非日常ではなく、「日常の延長線上」をちょっと旅する感覚だ。観覧車の高さは36メートル。アイランドシティにある九州最高層のマンションの4分の1しかない。だが、家族で小さな幸せを実感できる場所がこんなに手近にある、というのは素晴らしい。

 実は今年が「開園80周年」ということで、予習を兼ねて少し歴史をひもといてみた。ところが、どうしても解けない謎にぶつかってしまった。

 かしいかえんを運営する西日本鉄道に、開園当初の歴史を尋ねた。始まりは1938(昭和13)年4月。「香椎チューリップ園」として、九州で初めてチューリップの栽培を開始した。そして戦後の1951年に「遊園地として拡張・整備を行い」現在の広さで「香椎花園」が誕生した。

 園のすぐ近くにある西鉄香椎花園前駅は、1941年4月「香椎福日園前駅」(臨時駅)として開設された。「チューリップ園前」駅ではないのだ。

 「福日」は西日本新聞社の前身「福岡日日新聞」のこと。当時の本紙には、1941年4月1日付の朝刊に「西日本一チューリップ大花園 香椎福日園 愈(いよいよ)けふ開場 各種子ども運動戯具、野外演舞場など」とある。これは香椎花園の前身ではないだろうか。

 同5日には活況を報じる記事が載っているが、その少し上には日中戦争での郷土出征兵士の戦死を知らせる小欄「興亜の礎」がある。そんな時代だ。福岡陸軍病院の傷痍軍人70人を招いた記事も残っている。この年の12月8日、日本は真珠湾攻撃し、太平洋戦争が始まる。

 香椎チューリップ園がどういう経緯で「福日園」になったのか、そしてそれが再びどのような経緯で「香椎花園」になったのか。西鉄に問い合わせたところ「分からない」と広報課。西鉄社史にも載っていないという。

 西日本新聞社史にも、1941年のところに「4・1 香椎福日園開場」の1行があるだけだ。その時期の膨大な数のページを精査することはできなかった。ちなみにこの翌年の1942年、国策による私鉄統合で西鉄が、新聞合併で西日本新聞が発足しているので、かなりの混乱があったことは想像できる。

 1956年、遊園地として開園して以降の香椎花園の歩みは、多くの人がよく知るところだ。一方で戦中戦後の動乱期に、園がどのような歴史を刻んだのか――。力不足で調べが及ばず恥ずかしい。どなたか、空白を埋める資料をお持ちの方は、教えていただければ幸いです。

 ちなみに香椎花園の入園者数は、データの残る1982年以降で最多は86年の約57万人。近年は2012年が約31万人、14年は約25万人、16年は約22万人と推移している。減少に歯止めがかかっていないように見えるが、昨年、「まちのオアシス」をコンセプトに園内をリニューアル。西鉄も「子どもからシニアまで3世代が交流する“遊び”と“癒し”が一体となった施設を目指す」と力強い。

 動乱期を乗り越え、家族の小さな幸せを育んできた「かしいかえん」。まだまだ咲き誇ってもらいたい。

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