し烈な”採用レース”号砲 「うまくいっていないのかな…」学生の鋭い視線も 就活イベント・会場レポート

 見渡す限りのリクルートスーツ。そして絶え間なく聞こえる、呼び込みの声――。

 2019年春卒業予定の学生向け会社説明会が解禁になった1日、リクルートキャリア(東京)の合同説明会イベントが開かれた福岡市のヤフオクドームは、約1万1000人の来場者でごった返した。出展したのは地場企業からナショナルブランドまで計約290社。しのぎを削る各社には、「売り手市場」の採用戦線の厳しさがにじんでいた。

振り向かせてみせる

 「家づくりを通して、全ての人を幸せにすることです!」。大音声が聞こえてきた。注文住宅などを手掛ける「よかタウン」(福岡市東区)のブースは満席で、立ち見もいる。社員の気合は満点。学生の後ろに、別の社員がいて、手で「もっとアゲて」というような合図を送っている。

 学生は熱心に聞き入っていた。「知名度がないウチが負けないようにするには、熱意しかないですから」と人事課の川元博志さん。昨年も約20人の採用目標を達成したという。

 イベント開始から30分ほどすると、学生が集まるブースとそうでないブースの明暗がはっきり分かれていた。大手企業の中にはすでに待機の列ができているところも。中古車販売などを手掛ける企業は、採用するテンポをアピールしていた。「普通の企業は5次面接でやっと部長が出てくるぐらいですが、ウチは2次で部長が来ます!」

 青果卸売の熊本大同青果(熊本市)は、<勤務地熊本市内 転勤無し!>のプラカードを掲げてアピール。「ここも、売りの一つです」と担当者。別の企業の採用担当者は、「きょうは(活動の)解禁日だから、多くの学生はお目当ての企業がはっきりしている。そこを振り向かせるしかない」。

 一方で、こんな場面もあった。

 「ちょうど今から(会社の説明が)始まるから。どうですか?ぜひ、ぜひ!」。スーツ姿の男性が、さかんに学生に声をかけた。立ち止まった女子学生4人に「お、4人、4人さんね!どうぞ!」とたたみかける。学生たちは「あ、いや、ちょっと…」と遠慮しがちに立ち去った。各社が競うように呼び込みをかける様子に、ある学生がつぶやいた。「キャッチみたいやね…」

見たいのは「雰囲気」

 「売り手市場」とは言うものの、ほとんどの学生にとっては初の就職活動。話を聞いた学生はみんな、緊張感を持って会場に臨んでいた。説明会では何に注目しているのか。

 熊本市内の女子短大生は「ネットで会社の概要はだいたい分かる。見たいのは、実際に触れないと分からない『雰囲気』」と話す。ブライダル業界を希望しているが、この日回ったブースで心に残ったのは「自分の目標をずっと先まで立てていることを話してくれた社員」という。「そんなことができる会社は魅力的ですよね」

 福岡大法学部の男子学生は、人材開発系の業界を希望。「自分が活躍できる舞台があるか、そこを重視する」。メーカーやIT系の企業を志望しているという鹿児島大工学部の男子学生は「働いている人が『受けてみたら受かった』みたいに言われる会社は…。意思を持って入社した人たちが集まっている所を選びたい」。

 北九州大外国語学部の女子学生は国際物流に関心がある。「『年功序列ではない実力主義』の会社じゃない方がいい」と意外な答え。「経験を積んだ人が、しっかり引っ張ることができる組織の方が安心して働ける」

 別の学生は、説明会をいくつか周りながら気になったことがあった。「3人の社員さんが順番に話していたんだけど、1人が長くなりすぎたんです。ほかの2人が止めるかな、と思ったら、困った顔をして見ているだけ。『(時間)押してるよ!』とか和やかに突っ込んでくれればよかったんだけど、いつも(社内の)コミュニケーションがうまくいっていないのかな」

 学生たちは、細かいところまで見ている。

「違う人材」を求めて

 自治体として唯一参加(県警を除く)したのは佐賀県。民間企業に流れている優秀な人材を確保するため、2008年度に導入した「特別枠」のPRにいそしんでいた。専門科目などで行う本試験とは別枠で、民間企業の就職活動にあわせて展開。当初数人だった採用が、現在は行政職の半分以上をこの特別枠が占めるという。

 「公務員試験が必要ないので、敷居が高いと思っている人にアピールできる」と県人事委員会係長の藤田敬三さん。企業業績が好調な中、行政の人材確保は喫緊の課題だ。

 <銀行から、はみ出せ。>――。鮮やかな赤が目を引くパンフレットは、鹿児島銀行(鹿児島市)が昨年の活動から採用している新たなツールだ。人事部の藤崎昭文さんは「改訂前は『ザ・銀行』という感じでした」と話す。

 人口減少や、ITを活用した金融サービス「フィンテック」の台頭で変化が求められている銀行業界。「新しいことをやる中では、これまでとは違った人材が必要。『非志望層』を取り込みたい」と意気込む。この日は5〜10分の休憩を挟みながら、30分間の説明を7回。「さすがにきついですが、カラオケに行くと思ったら楽です」

 面接などの選考が解禁されるのは6月1日。企業にとっても学生にとっても、厳しい戦いが本格化する。

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