天神≒渋谷、中洲≒歌舞伎町、平尾浄水≒田園調布? 若手「よそ者」たちの福岡考

 福岡は制約の中で都市としての戦略を磨いた結果、「地方最強」の都市になった――。まちビジネス事業家・木下斉さんへのインタビューでは、「よそ者」ならでは視点にうなずかされた。

 自分たちが暮らす街への、客観的な評価は興味深い。長野出身で、福岡に記者として2年間暮らした元同僚は記事で過去に「『修羅の国』はちょっと言い過ぎ」と指摘していた。そんなことを思い出していたら、「こんな冊子があるよ」と情報が寄せられた。

 その名も<転勤天国福岡>。A5判、10ページの冊子を開くと…。

<薬院エリア「素敵な私に酔いどれシティガール」>
<博多エリア「俺様を福岡へ左遷するなど認めない」>
<西新エリア「豚骨スープは博多のエスプレッソ」>

 やや刺激的な文言が並んでいる。問い合わせ先は「UR都市機構九州支社」とある。あのお堅いイメージの独立行政法人が、こんな前衛的な印刷物を発行するとは――。

 「新しい顧客の開拓を目指した、若手職員の企画でした」。同支社の由良北斗さん(26)と、湯浅資さん(25)が教えてくれた。昨年2月、3000部を作り、福岡市内の地下鉄駅やURの営業センターなどに置いた。大部分が手に取られ、今は200-300部が支社に残っているだけという。

 2人を含む企画チームの若手職員6人は、全員が福岡以外の出身。住人は中高年層が中心で、「若い人はあまり住まない」とも言われるUR。これまであまり力を入れていなかった面もある同世代へのPRのために、自分たちの「福岡像」を冊子に込めた。

 冊子では、福岡の職住近接ぶりや物価の安さをPRしつつ、<転勤で少し心細いというあなた>のために天神≒渋谷、中洲≒歌舞伎町などと東京の街との類似性も示してみた。平尾浄水≒田園調布、アイランドシティ≒豊洲は、地味ながらなかなか言い得て妙だ。

 「転勤パラダイス」と話す2人に一応、福岡の「気になる所」を聞いてみた。

 東京・町田市出身の湯浅さんは「バス停にみんなあまり並ばないところ、ですかね…」。これは福岡の人はあまり気にしていないのかもしれない。ただ、近年では天神のバス停で乗客が列を作ることも増えてきたように感じる。

 大阪・堺市出身の由良さんは「エンドレス飲み、ですね…」と話し、こう続けた。「みんな家が職場から離れていないので、終電を気にせずに飲める。大きな声では言えませんが、上司に誘われたときは大変だと思ったこともありました…」。これは東京に転勤した福岡の人から、逆の反応が聞かれる。「終電を逃すことが、こんなにも致命的だとは知らなかった」

 2人とも、福岡での生活は2-3年。少し踏み込みすぎた(?)表現もある冊子だが、背表紙には<福岡に来て良かった!>という言葉を入れた。企画した6人の、共通の思いを込めたという。

 「よそ者の目」で私が最も好きな記事は、少し前だがニューヨークタイムズのこの記事だ。外国からの観光客の視点で分析した福岡の魅力を「少しずつ、全てがある(a little bit of everything)」とつづっている。

 確かに「福岡って『ここ』っていう観光スポット、ってないよね」という声はときどき耳にするが、それは裏返せば、食も海も山も都市も歴史も情緒も、コンパクトに満喫できるという、福岡ならではの特性といえる。

 URの若手が作った冊子には、欄外に「福岡あるある」がまとめられている。
<運転中、気を抜くと四方をバスに包囲されてしまう>
<じいちゃんばあちゃんのサ行が「シャ行」になる>
 こちらも私たちにはいずれも当然のことだが、外から見ると個性ととらえられる。内と外、両方の視点から見ると、街はもっと面白くなる。

PR

社説・コラム アクセスランキング

PR

注目のテーマ