「動かない」事業者は滅びる? 九州経済白書を読む 全国よりも状況は深刻

 減り続ける人口と、増え続けるネット通販の中で、事業者がとるべき方策は――。2018年版九州経済白書「スマホ時代の新しい消費と流通」は、先進的な企業の取り組みをはじめとしたいくつかの処方箋を示した。それは逆に、「動かない事業者は滅びる」という宣告のようにも見えた。

 人口減少もスマートフォンの普及も今に始まったことではなく、白書のタイトルに「いまさら」感がないわけではない。それでもこのテーマが取り上げられたのは、スマホ時代の消費行動の傾向がはっきりと見えるようになり、さらに九州の状況が全国と比べても厳しいからにほかならない。

 九州の人口減は深刻だ。国立社会保障・人口問題研究所の資料によると、全国の人口は2020年の約1億2400万人から40年には1億700万人に13.6%減ると推計。一方、九州7県の同じ期間の減少率は14.7%で、全国平均を上回るスピードで人が減る。減少が比較的緩やかな福岡県を除く6県の減少率は16.6%にもなる。(※推計は全国と都道府県別が比較可能な2103年3月のデータから)

 こうした状況から、白書は九州(山口、沖縄両県を含む)の小売り販売額がおよそ25年間に2.2兆円減ると推計。これは現在の九州のスーパーマーケットとコンビニエンスストアの販売額の合計に迫るという。

 二つ目は、ネット通販の拡大。白書によると、2016年現在でインターネットを通じた商品の取引は全体の5%程度にとどまっている。一見、少なそうだがそうではない。

 ネットショッピングでの世帯当たり購入額の増加は全国では10年間で2.9倍になったのに対し、九州は3.2倍で、特に近年は顕著に伸びている。代わりに減っているのは、実店舗での購入だ。

 そこに追い打ちをかけるのが、消費者同士が直接商品を売買するCtoCサービスの利用の増加。今回の白書に合わせ九経調が実施したアンケートでは、CtoCで購入した経験がある人は26%。今後消費の中心になる18-29歳に限れば、42%にも上る。

 店を開けているだけでは状況が厳しくなるのはもちろん、従業員の人手不足も重なれば、店を開けることさえままならない事態も広がるだろう。

 九経調の白書執筆メンバーは、九州に迫る苦境を打開する手がかりになる事例を探した。しかし「簡単には見つからなかった」という。つまり、大手や東京・大阪の企業に比べると九州ではこうした取り組みを進める動きはまだ少ない。「そうした『意識』の低さにも警鐘を鳴らしたかった」という。

 白書が示した取るべき方策は▽データ経営の導入▽業種や業態を超えた流通の展開▽SNSを通じた消費者との「共感づくり」▽新しい消費と流通を支える人材の確保――だった。

 どれも大事だが、最も取り組むべきは「共感」づくりかもしれない。白書では、熊本市の百貨店・鶴屋の「ラララ大学」を取り上げている。販売と切り離して、従業員が野菜の目利きやスーツの着こなしなどに関する講座を開くという取り組みで、客の心理的なハードルを下げたり、ファン獲得につなげている。

 同様の取り組みは全国各地の商店街でも、店主がさまざまな知識を教える「まちゼミ」として広がっている。直接の販売以外で消費者にアプローチする作業は、今後ますます重要になるだろう。データ経営で省力化したマンパワーを、「つながりづくり」のようなアナログの作業に投入するのは、一つの道筋だろう。

 スマホ片手に買い物をする「動かない」消費者はこれからも増える。事業者が、動き方を変えるしかない。

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