売り手市場でも就活は「し烈」 学生たちに背筋を伸ばされた

 2019年春の採用へ、企業も学生も、すでに動いている。

 昨年末、企業の人事担当者に集まってもらい、qBiz内のコーナー「わが社の人財戦略」に関連したイベント「人事だらけの生トーク」を開催した。「超」がつく売り手市場が続く採用戦線。現場の叫びは切実だった。西日本新聞社も九州の地場企業。例外ではない。

 先日、学生を対象にしたわが社のインターンシップに現役社員として参加した。

 集まった学生たちは、やりがい、実際の仕事内容、職場の雰囲気を詳しく聞いてくれた。かつてはかなりの体育会系だったわが社も、最近では「働き方改革」が進んでいる。

 株高が続き「好景気」と言われるが、新聞業界は決して、そうとはいえない。残念ながら部数は減り続けている。

 そんな中、新聞記者を目指してくれるなんて…とありがたかった。一方で、学生たちの目に新聞がどう映っているのか知りたく、配られた弁当を食べながら質問してみた。「新聞の残念なところ、教えてください」

 すると、こんな答えが返ってきた。

 「広告はご高齢の方向けのものが多くて、自分たちには読むところが少ない。若い人が離れて、中身はどんどん年齢層が高い人向けのメディアになる、それが相乗して悪くなっている感じですね」

 「ずっとデザインが変わらないので、『あって当たり前のもの』になっているような…。もっとおしゃれなデザインになるといいな、と思います」

 「デジタルでどう伝えるか、もっと検討したほうがいい」

 「そもそも大きくてかさばる、捨てるのが大変」
 
 「業務提携した方がいいんじゃないでしょうか。新聞社は各県ごとにあるので、市場を食い合うことはない。だから一緒になると今よりも取材網も、記事も充実するのでは」

 耳が痛かったが、指摘にはうなずかされた。学生たちは志望する業界が抱える課題をちゃんと見極めていた。次に「就活は比較的楽なのではないですか?」と少し意地悪なことを聞いてみると、全員が否定した。

 人気企業に希望が集中し、学生の競争は結局し烈だという。「楽、っていう感じは全然ないですね」。求人倍率も内定率もあくまで統計。一人一人の真剣勝負は変わらない。そう思うと背筋が伸びた。

 インターンシップの数日前、実名でアカウントを公開している私のツイッターに、ある学生から直接連絡があった。インターンシップの抽選に外れ、本紙の記者をネットで探していたという。「北海道に住んでいるんですが、とりあえず福岡に行くのでよろしくおねがいします」。勢いに押されて会ってみると、なかなかの変わり者だった。

 出身は九州ではない。浪人中に、福岡が拠点のアイドルグループHKT48のファンになり、大学進学後も劇場公演に来ていたという。初めて入った天神の屋台で店主と常連客にかわいがられ、そこから屋台好きになった。

 ゼミの教材に屋台を選び、福岡で屋台を6件取材した。福岡市は屋台を守る条例を作っていると聞いていたのに、経営者たちは市に対する強い不満を抱えている。なぜ?と今度は市に聞き取り。「経営者と意見交換する場が少ない、ということが感覚のずれになっていると感じました」という。

 いつしか自分が「推し」ていたHKTのメンバーはグループを卒業した。「福岡への愛だけが、残ってしまいまして」。この日は9回目の来福。元々関心がある事件報道や、屋台をはじめとした街の取材に関わりたいという。

 暖房がよく効いたカフェでもダッフルコートを脱がずに力説する彼にも、インターンシップと同じことを聞いてみた。すると語気強く、こう返された。

 「それはもちろん業界の危機感は自分にもわかりますけれど、まだまだ新聞にできることはたくさんあるじゃないですか。捨てたもんじゃないですよ」

 話を終えて彼を見送ると、「これからまた、屋台に行きます」。凍えるような風が吹いていたのに、自分の背筋は丸まるどころか、しゃんとさせられた。

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