デジタルが再発見する「地元」の魅力 「そのままを、アートに」チームラボ

 夜の福岡城跡をデジタルアートで彩るイベント「城跡の光の祭」が、福岡市で開かれている。石垣に映し出される動物たち、二の丸の木々を彩るさまざまな色の物体、明滅する石段…。福岡城跡の新しい姿を体感できる展示を仕掛けているのは、プログラマーや建築家らで構成するアート集団「チームラボ」。2001年の設立以来、世界各地でイベントを手掛けており、国内では東京や大阪といった大都市以外でも多くの来場者を集めている。福岡城でのイベントに携わるメンバーの一人、松本明耐さんに聞いた。

 ―今夏、長崎県大村市の大村公園と佐賀県武雄市の御船山楽園でもデジタルアートの展示を手掛け、大村では約1カ月間に約6万3千人、武雄では当初予定の期間を延長し、3カ月間で海外からも多くの来場客が訪れた。

 「有料で実施した大村、武雄で多くの方に来ていただいただけでなく、2017年12月に入場無料で実施した徳島市では10日間で約32万人が訪れた。人口の多さの問題ではなく、地方そのものに隠されていた魅力が再発見されたからかもしれない」

 ―チームラボが取り組んでいるのは「デジタイズドネイチャー(Digitized Nature)」。「自然が自然のまま、街が街のまま、アートになる」ためのアプローチだという。

 「物質ではない『デジタル』は、いまあるものそのものに重ねることができる。都市や自然が持つ遺産を、もう一度拡張することができる。近代以降、日本では情報の流通が盛んになる中で、街や地域はどこも同じように発展してきた側面がある。建物や公園も、似通っていることが多い。でも近代以前は、それぞれの土地の個性が、それぞれに発達していた。地方には、そうした近代以前のシーンが多く残されている。例えば武雄の御船山も近代以前の公園。現在の公園と違って、自然と公園の境界はあいまいという特徴がある。ほかにも土地の祭りにはすごくエッジの効いた良い祭りがある。そこでしか生まれなかったもの、そこにしかないものこそが、地方の魅力だと思っている。ただ、そうした歴史的な遺産と『アート』はデジタル以前は相性が悪かった」

 ―相性が悪かったというのは、例えば城跡だと『建て直す』『改修する』といった選択肢になる。それは簡単な作業ではないし、形を変えてしまうことにもなる。

 「それが必要ないデジタルを使って、歴史あるものにスポットライトを当てることで、自分がいるところってこういうところなんだ、と思ってもらえる体験を生むことができる」

 ―12月の福岡城は内覧会で高島宗一郎市長が触れていたように「一年間で最も人が少ない時期」。その城跡の風情とデジタルアートの融合が、多くの人の流れを作っている。単に「きれい」だけではない吸引力があるのか。

 「『福岡って、長い歴史があるんだ』『福岡の街ってどう変わってきたんだろう』と歴史の文脈で街や自分を捉え直す新しい体験になっていると思っている。書籍ではなかなか得られない、感覚的なものは、地域のことを愛し、好きになるきっかけになる。物質ではないデジタルでの表現が生まれたことで、自然そのもの、街そのものにフォーカスすることができるようになったという点と、地方そのものの価値は、近代以前のものに、本質的なものがあるという点。その二つがマージ(合わさって)して、チームラボの、展示になっている。現実的に、集まるきっかけは『きれいな光だな』とか『子どもが楽しめそう』とかそういうことかもしれない。でもそこに足を運んで、歴史に思いをはせて帰ってくれたらいい。親子の会話にもなると思う」

 ―チームラボにとって「東京」といわゆる「地方」の違いはあるのだろうか。

 「あまり考えたことがないが、結果的に地方の仕事がとても多くなる。もしかしたら、地方にこそ、表現の幅がより多くあるのかもしれない。海外や地方でイベントを行うときは、まずその地の歴史をしっかり知ることが大事なのは言うまでもない。福岡城なら石垣。御船山なら自然と境界がない公園だ、ということだった。展示ではさらに、意図しなくても新しい発見をもたらすことがあるという。例えば、神奈川県藤沢市の新江ノ島水族館。高度な技術で作られたメーン水槽の主役は、自然そのものの動きをするイワシの群れ。だが、展示では脇役のエイにデジタルアートが投影され、主役のように注目された。『エイってどっちが表なの?』『どんな種類がいるの』と関心を喚起したそうだ」

 ―デジタルが、モノそのものの力を引き出した例といえそうだ。

 「福岡城では、石垣に映像を当てたらすごいだろうな、と思った。街に気付きが生まれることで、街への愛着が生まれることもあるかもしれない。行政区としての福岡市、ではなく『福岡』ってなんだろう、と感じてもらえるきっかけになるといい」

 ―「デジタイズドネイチャー」にはこれから、どんな可能性があるのだろうか。地域を元気づける仕掛けにはなれるか。

 「武雄の御船山では、武雄だけでなく嬉野など周辺の宿泊施設でも宿泊客数が伸びたようだ。『経済効果』というのはあまり考えていないが、地域の魅力を再発見する取り組みを通して、遠方からも関心が寄せられたと言えるかもしれない。第一歩は、自分たちの持っている遺産は何なのか、きちんと考えることだろう。地域の『そもそもの強み』を考えることが必要だ。現在では、例えば旅行では『パリに行こう』とか『フランスに行こう』と大きく地域を捉える感覚ではなくなりつつある。高度に情報化が進んだ今、旅先の魅力はもっと局地的な『スポット』で捉えられる。世界中にダイレクトに情報が届き、競われる中だからこそ、足元に何がある、何が残っているのかを見極める作業はどんどん大事になっている」

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