「The End」のない外国人受け入れ環境整備

 問題です。以下はどれも福岡市にある同じ建物を指しますが、さて何のことでしょう(ヒントは写真です)。

・Former Prefectural Guest House
・Former Prefectural Hall’s Former GuestCenter
・Old Municipal Guest Palace of Fukuoka Prefecture
・Former Fukuoka Prefecture Public Hall Distinguished Guest House

 正解は、福岡市中央区にある旧福岡県公会堂貴賓館。今年3月、総務省九州管区行政評価局が発表した調査によると、パンフレットやウェブサイト、地図などにこれら四つの表現に加え、「Kihinkan Hall」を合わせた計5通りの英語表記が混在していた。

 同局はこの5通りの表記について、福岡などで日本語を学ぶ外国人留学生100人に対し「同じ場所を示していると理解できるか」と質問。74%が「理解できない」と回答したという。

 日本への外国人客が急増する中、九州に入国する外国人もうなぎ上り。2003年には約45万5千人だったが、今年は9月までで約350万人に達しており、過去最高だった昨年の372万人を超える勢いだ。

 政府は観光立国実現に向けた環境整備の一環として、多言語対応の強化、改善を呼び掛けている。貴賓館のように英語表記が混在している観光地はまだ多い。ほかにもいろいろあるのかも…とインターネットを手がかりに探してみると、ある写真を見つけ、手が止まった。

 交差点前などに設置してある案内表記に「The End」の文字。「行き止まり」、と言う意味に使われていて、ほかのサイトなどでも話題になっていたようだ。にしても何というインパクトの強さ。しかも左に曲がると荒津ふ頭、右に曲がると天神、とある…これは福岡じゃないか! そして上に見えるは間違いなく都市高速。車を走らせてみた。

 あった。まさにネットで見た通り。ここは先に車を走らせると行き止まり、というよりも岸壁から博多湾へ真っ逆さま、である。「間違っとらんよ。だって海にボチャンって落ちたら『一巻の終わり』やん」と、ついてきた小学生の娘は妙に納得していた。

 これは国土交通省が定める案内標識。標識の柱を確認すると「福岡市中央区役所 案内標識 0137」とある。「行き止まり」を示す標識は一般的に英語で「Dead End」と記されるはず。なぜジ・エンドなのか…。

 同区役所に尋ねたが、担当者も「設置当時の事跡がなく、分からないのです」と困惑。「行き止まり」の部分は上から張って外国語表記を付け足した可能性があるが、「確かに、外国人から見たら違和感はあるかもしれない」とのこと。表記の変更を検討するという。

 個人的には、表記が多少間違っていても仕方がないのかなと、思う。確かに外国人は一瞬戸惑うかも知れないが、道路に「end」とあれば意味はなんとか伝わりそうだ。

 無数にある案内板の全てを改善する環境整備には、大変な労力がかかる。人手不足の中、限られた予算で職務にあたらなければならないのは民間企業も自治体も同じ。「The End」の改修は、他の施策を優先して後回しでもいいかもしれない。

 一方で先日、買い物に来た福岡市博多区のキャナルシティでこんなことがあった。

 「あ、○×▽▲×○」

 肩をたたかれて呼び止められたので振り返ると、若い男性が2人。「どうしましたか」と答えると、ぬっとスマートフォンを差し出された。画面には<ピザ屋はどこ?>と書いてある。

 2人は韓国語で話している。よし道案内だな、とつたない英語で必死に説明しようとすると、男性はスマホを今度は私の口元に差し出してきた。しゃべるの? と指さすと男性はうなずく。

 「えー、この先のエスカレーターを降りて曲がって…、ああ、やっぱりあそこにある地図を見た方が早いですね」

 話すのに合わせ、画面には、あれよあれよとハングルが入力されていった。日本語でもたどたどしい私の案内に男性は微笑して、指でOKのサイン。近くにピザ店があったことに安心した様子で、一緒に館内案内図を見ることができた。

 ハード整備が完ぺきでなくても、あまり心配しないでいたい。それを補う技術は想像以上に早く進んでいる。そして福岡に暮らす私たちには、アジアの交易都市として長年受け継がれてきた「おもてなし」の気質があるはずだ、というのは楽観的すぎるだろうか。

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