福岡とロンドンが似てる?

 こりゃ天神やないか…。

 福岡市内の自宅を出て約18時間、ようやくたどり着いた英国・ロンドンの西の玄関口、パディントン駅のホームに降りて思わずつぶやいてしまった。アーチ状の高い天井の構内、そして終点の線路に電車が次々と滑り込んでくる様子は、まるでかつての西鉄福岡駅だった。

 10月下旬、初めて英国を訪ね、ロンドンには5日間滞在した。出鼻から天神大牟田線を連想させられ、思いがけず、都心のまちづくりについて考える機会になった。

 街に出ると、さらに「福岡的」な光景が広がっていた。道を埋めていたのは西鉄バスならぬロンドン交通局のバス。話には聞いていたが、想像以上にバスの台数は多い。百貨店や専門店が並ぶリージェントストリートとその周辺で、停留所に5、6台のバスが連なる様はまさに天神。つい「ニモカ」をかざしたくなる衝動にかられた。

 西鉄のバス保有台数はグループ全体で、事業者としては国内最多の2705台。ロンドン交通局のバスはその3倍以上の9300台超で、こちらも屈指の「バス大国」。そして同様に深刻な渋滞問題を抱えている。

 おっと、バスが発車する瞬間に車内から何かが飛び出してきた。乗りこんだ客の1人が、飲み終わった飲料水のペットボトルを投げ捨てたのだ。歩道を見ると、ごみ箱が至る所に設置されているにもかかわらず、とにかくゴミが多い。そしてあちこちから立ち上る紫煙。路上禁煙が浸透している福岡とはかなり異なる状況だ。

 かと思えば、パブで一杯ひっかけたグループがそのまま駐車場に向かう光景も。イギリス(スコットランドを除く)の飲酒運転の基準は日本よりかなり緩い。検挙の対象となるアルコール検出量は、呼気1リットルあたり35ミリグラム以上。15ミリグラムで酒気帯び運転、25ミリグラムで飲酒運転とされる日本より、かなり寛容だ。

 とはいえ外国人観光客がそぞろ歩き、街の中心部に大きな公園があり、屋台ならぬパブの外でグラスを手に人々がワイワイ語り合うロンドンの光景は、福岡人として親近感を抱かずにはいられなかった。

 気のせい、と思っていた二つの街に通じるムード。実は日本政策投資銀行九州支店が2014年、「ロンドンと福岡の空間構造分析に見るまちづくりの可能性」と題した調査報告を発表しており、なかなか興味深い。そこに挙げられた、主な共通点は以下の通りだ。

▽国内の主要都市と同程度かさらに近い距離に、海外の主要都市がある
▽第3次産業が占める割合が大きい
▽中世期に人口交流の起点になる国際貿易都市として発達した

 そして福岡の約100年後にロンドンの街づくりが進んだ点を挙げ、<「福岡がロンドンに似ている」のではなく「ロンドンが福岡に似ている」と言ってもいいのでは>と力強く分析している。

 調査報告は、こうした類似性をもとに「ロンドンのまちづくり手法が福岡の参考になる」と指摘している。大きなポイントは、歴史的構造物、古い街並みを生かすことの重要性だ。

 福岡は今、天神ビッグバンをはじめ、街全体が更新期に入っている。福岡市博物館の有馬学館長に数年前に話を伺ったとき、福岡市は「上書き都市」だという指摘に深くうなずいた。30年後の天神は、今とは似ても似つかない姿になっているだろうが、開発と同時に、その歩みを感じられる街づくりを期待したい。

 ロンドンには博多ラーメンの店も数店舗あった。ブティックなどが並ぶこじゃれた一角に構えた店で豚骨ラーメン1杯とビールの小瓶を注文すると、少し太い麺のラーメンが出てきた。「食べ物はおいしくない」としばしば言われる英国だが、ロンドンの博多ラーメンはなかなかのものだった。

 請求書には15ポンド(約2200円)とあった。さすがは世界屈指の物価高を誇るGreat Britain(グレート・ブリテン)。天神界隈ならチャーシュー麺にして餃子を付けて替え玉をしても、お釣りが来る額だ。

 共通点は確かに多い2都市だが、なんといっても最大の違いは家賃や飲食などにかかる生活コスト。福岡のほうが暮らしやすいと思いますが、どうでしょう。というわけで、天神をそぞろ歩けば「グレート・ブラ天」なのです。おあとがよろしいようで。

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