インスタ花盛り、でも簡単じゃない「映え」

福間 慎一

 「インスタ映え」。今年の「流行語大賞」に選ばれる言葉の一つ、とも言われている。写真SNS「インスタグラム」に投稿すると映える写真や、見栄えがする被写体、といった意味だ。

 インスタの利用者は急伸し、若年層の間ではフェイスブックを超えて利用されるSNSになりつつあるとか。今月初めには、国内のユーザーが2000万人を突破したと発表された。

 東京など大都市に限った話ではない。福岡市の市場調査会社ジーコムが5月に福岡県内の約500人を対象に実施した調査によると、インスタは5人に1人が利用。利用率は2015年に比べて2.5倍も伸びている。

 人がたくさん集まる場所は当然、ビジネスの場所になる。PRのツールとして参入する企業はどんどん増えているが、成功しているところはまだ、そう多くないようだ。

 企業などのインスタ運営支援を中心とした写真撮影や動画製作を行う「Reevo(リーボ、福岡市中央区)」社長の松尾龍馬さん(35)は、続々とインスタの企業アカウントが開設される今の状況を、インターネット黎明期の1990年代後半に重ねる。「企業が競ってホームページ作っていたときに似ている」

 往時に思いをはせた上で、インスタを見ると、なるほど「とにかく始めた」という感じの企業もちらほら。イベント告知の画像をドンと貼り付けただけものや、1年以上も更新されていない「廃墟状態」のものも…。

 リーボが手がけたアカウントの一つが、福岡市の辛子めんたいこ製造販売「山口油屋福太郎」。同社の菓子「めんべい」と、イケメンを組み合わせた「イケメンベイ」を投稿している。めんべいは完全に脇役で、ピントが外れたものも。菓子のPRというよりも、ファッション雑誌のようだ。

 インスタは、お気に入りの作品だけが並ぶ「自分だけのアートギャラリー」。その世界観を壊す写真が一つでも入ると、どうなるだろう。美しい風景の写真が好きな人のタイムラインに、極太の文字で「今だけ全品100円引き!!!」のような投稿が混入したら――。排除は免れないだろう。

 2011年に起業したリーボはインスタの可能性に早くから着目し、16年から企業向けの支援を始めた。福岡市などの自治体にも広がり、九州外からも引き合いがある。「フェイスブックやツイッターに比べて、インスタはフォローされるハードルが高い」(松尾さん)。反面、受け入れられればファンとの結びつきは他のSNSよりも強くなる特性もある。

 「福太郎」は手応えを感じているという。広報によると、中高年の男性の客層が厚いめんたいこ業界で、若い世代にブランドを知ってもらう新たなチャンネルになっているのだ。フォロワーも昨年2月の開設時の目標は1000人だったが、現在は1700人を超えた。

 最近は、その「40歳代以上の男性」がインスタに続々と流れているとも言われる。興亡めまぐるしいネット界隈では、「おっさんが来ればそのサービスは終わり」などとやゆされることもあるが、まだしばらくインスタの盛り上がりは収まらないだろう。

 ただ、すでに企業間の競争は激しい。松尾さんの言葉に納得した。「これから始めるところは、よほどクリエイティブか、人の心をつかむ相当の工夫が必要」

 インスタはその名の通り、簡単に始められる。でも「映え」る存在になれるかどうかは、別問題だ。

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