【こんにちは!あかちゃん 第11部】脱「お産難民」 産科医療は今<4>医師の育休・復職支援を

新生児室で赤ちゃんを診察する清島千尋さん(右)と今城有芸さん 拡大

新生児室で赤ちゃんを診察する清島千尋さん(右)と今城有芸さん

 緊急搬送された妊婦に対応する医師たちの中に、2人の女性の姿があった。11月上旬、福岡市の福岡大病院。今城有芸(いまぎゆき)さん(32)と清島千尋さん(33)はともに子育て中で、今城さんは4歳の娘、清島さんは3歳の長男と1歳の長女の母親だ。

 「仕事が好きなのに、出産したら続けられないかも…」。今城さんは以前、そんな不安を抱いていた。独身時代は週に2~3回の当直をこなし、夜中の呼び出しは日常茶飯事。出産を機に、一度は第一線から離れた。

 でもやっぱり、現場に戻りたい。娘が2歳になった時、復帰する。福岡大病院を選んだのは子育て支援が充実していると聞いたからだ。清島さんも長男を産んだ半年後から働いている。

 ほかの医師が月平均5~6回ある当直は1回に。セカンドコールと呼ばれる緊急時の待機業務も免除されている。2人とも夫は医師で共働き。午後10時まで延長が可能な院内保育所もあり、清島さんも利用している。

 清島さんは「上司や同僚、家族が理解し、支えてくれるから働けています。本当にありがたい」と話す。福岡大産婦人科学教室の宮本新吾主任教授(56)は「カバーする医師たちは負担も多い分、研修や学会で発表するなどチャンスも多い。互いにできることをして、両輪で成り立っている」と説明する。

 《日本産婦人科医会が昨年、分娩を取り扱う病院(有床診療所を除く)1112施設に実施したアンケートによると、この5年間で常勤の男性医師の数は変化していないが、女性医師は1・5倍に増加。その半数以上が妊娠中か子育て中だ。にもかかわらず、当直軽減や時短勤務など妊娠・育児中の勤務緩和を導入しているのは約4割。院内保育所は6割で設けられているが、病児保育、24時間保育の導入率は2割以下とまだ少ない。

 日本産科婦人科学会で周産期委員長を務める長崎大の増崎英明教授(61)は「昼夜を問わないお産ではマンパワーが大切。女性が働き続けられる環境をつくっていかないと、産科医療は崩壊する」と指摘する》

 労働者の権利として認められている育児休業だが、医師不足の中、取得できない病院は少なくない。長崎県でも2007年までは、産婦人科医が育休を取得した例はなかったという。

 県内の病院に医師を派遣している長崎大は、関連病院で育休の対象になる女性医師を1人は受け入れるようにし、労働力の不足を病院間の連携で補うシステムを構築した。08年以降は出産した女性医師全員が育休を取得し、全員職場復帰している。

 長崎大では男性の取得例も出てきた。井上統夫医師(45)は09年12月に妻が4人目の子を出産した際、2週間休んだ。妻の入院中、上の子たちの世話をする必要があったからだ。「忙しい時期に職場に申し訳ない思いはあったけれど、子どもと向き合い、家事労働の大変さも理解できた。取って良かった」と振り返る。

 一方、同じ日に同じく4人目の子が生まれた吉田敦医師(43)は、育休を取らずに働き続けた。「選択肢があり、周囲がサポートできる環境があることはすごく大切。安心して子育てできないからと辞めてしまう医師がいたら、残された医師も負担が大きく、悪循環になる。みんなで支え合って働きやすい職場をつくっていかなければ」


=2013/11/20付 西日本新聞朝刊=

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