【こんにちは!あかちゃん 第11部】脱「お産難民」 産科医療は今<5>助産師、地域も役割担う

マッサージをしながら妊婦の悩みを聞くバースサポーターの重光恵里さん 拡大

マッサージをしながら妊婦の悩みを聞くバースサポーターの重光恵里さん

 《助産師-。お産の介助ができる国家資格の専門職で、昨年末時点で約3万2千人が働いている。産科の医師不足が叫ばれる中、それを補う役割として期待が寄せられている》

 ハマユウの群生地に近い海に面した場所に、風情のある日本家屋が立っている。訪ねると、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。福岡県芦屋町にある「九州バースセンター・うばがふところ」。ここでは医師の徹底した安全管理の下、助産師がお産を担っている。

 施設の発案者は、総合病院で高リスクのお産に長年携わってきた斎藤竜太医師(48)。昼夜を問わない激務の中で医師不足を痛感し「医師の力だけでお産が担えなくなる」という危機感から、2010年に有志とバースセンターを立ち上げた。

 スタッフは助産師ら10人。斎藤医師が勤務する福岡記念病院(福岡市)と提携し、医師による5回の健診を受けて異常がなければ、助産師の介助で出産できる。血圧、体温、出血量、体重など、搬送すべき基準となる独自のガイドラインを設け、少しでも異常が見つかれば病院で出産させる仕組みだ。

 助産師の本田百合子さん(33)は「医師と綿密に連絡を取り合い、ガイドラインも日々作り変えている。最終的な判断をするのは医師なので、安心して取り上げられます」と話す。開業以来、約300件のお産を扱い、事故はゼロという。

 「赤ちゃんは力まなくてもちゃんと出てくるから、大丈夫だよ」。10月下旬、アロマの香りが漂う一室で、重光恵里さん(42)が臨月の女性にマッサージをしながら語りかけていた。3人の子育て中の主婦。週2回、ボランティアで働いている。

 バースセンターでは、お産を地域で支える仕組みづくりも試みられている。その一つが、重光さんのような「バースサポーター」の育成。現在約30人が登録し、託児や掃除を手伝い、出産にも付き添う。数日前に出産した成川雅代さん(31)は「悩みを聞いてくれて、陣痛中も誰かがずっとそばにいてくれるので心強かった」と振り返る。

 週1回の親を対象とした講座には、産後も1年半ほど通うことができる。1人で育児に向き合い、悩まないでほしいとの配慮だ。バースサポーター代表の斎藤まゆみさん(49)は「昔は地域で子どもを育てるのが当たり前でした。バースセンターを公民館のような地域に開かれた場所にしたい」と力を込める。

 医師、助産師、そして地域。斎藤医師は「この仕組みなら、産める場所が消えた地域に行政が新たにつくることもできる。他の地域にも広げたい」と話している。

 ●医師不足対策の一手に

 厚生労働省は2008年に医師不足対策として打ち出した「医療確保ビジョン」に、医療機関における「院内助産」と「助産師外来」の普及を盛り込んだ。院内助産は、正常な経過をたどるお産を助産師だけで介助するもの。助産師外来は、低リスクの妊婦に対する健診の一部を助産師が担う。

 医師と助産師が役割分担することで、医師はハイリスクの治療に専念でき、助産師は産前産後の継続したケアに携われる。異常時はすぐに医師が対応できる利点があるとされる。

 妊婦の満足度も高い。08年に助産師外来を開設した九州大学病院がアンケートをしたところ、80人のうち無記入の1人を除いた全員が「満足」「やや満足」と回答。「妊娠や育児の不安をじっくり相談できる」などの評価が寄せられたという。

 厚労省の調査では、08年からの5年間で院内助産の施設数は31から82に、助産師外来は273から490に増えている。


=2013/11/21付 西日本新聞朝刊=

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