「ガンダム社長」は実在した コラボこだわり、石田彰に悩み…あのアイスをMSに例えると<ガンダムを訪ねてin九州 第4話>

 「ガンダム接待」「ガンダム社長」というワードを、伊集院光さんのラジオで聞いたのは、おそらく20年以上前か。会社員が上司や社長、得意先と仲良くなるために、「ガンダム」の話題が役に立つという理論だ。

 いたんです。九州に。ガンダム社長と、ガンダム副社長が――。

 人間サイズの「メイス」を持ってバルバトスになりきったり、展示されたキャラクターのフィギュアを眺めて「なぜ俺はRAHDXのソシエ・ハイムをなぜ発売後すぐに買わなかったんだろう…ネットで今、定価の倍ぐらいするもんな」と後悔したりと、シリーズの世界を堪能できるイベント「ガンダムワールド2019in博多」が、3月31日まで開催中だ。

 全国を持ち回りで開かれているこのイベントだが、博多での主催関係者にガンダム好きがいるのか。広報担当者に尋ねると「協賛社の社長と副社長がそうですよ」と、予想外の答えが返ってきた。

 会いたかったぞ、ガンダム社長。というわけで、前回掲載から実に9カ月の時を経てよみがえった(?)企画、「ガンダムを訪ねてin九州」4回目をお届けする。(三重野諭)

「ガンダムワールド」協賛依頼に即OK

 JR博多駅の建物の9階にあるJR九州ホール。会場内の物販コーナーで目を光らせる2人がいた。九州育ちで知らない人はいないであろうアイスバー「ブラックモンブラン」で知られる竹下製菓(佐賀県小城市)の竹下真由社長(37)、夫の雅崇副社長(37)だ。

 まず、イベントに協賛した理由を尋ねた。

 真由社長(以下、社):ファンだからです。イベントとか協賛依頼が来たら、やるよねって前々から(副社長と)話はしてたんです。実際に来て、「やるよね」「良いんじゃない」みたいな感じでOKを出しました。

 雅崇副社長(以下、副):広告代理店に提案いただく中で、「ガンダムだったら即やる」って伝えていました。実際に持ってきていただいたので、社長に確認したんです。

 社としてのガンダムへの関与は、初めてではない。

 社:以前、セブン―イレブンからガンダムフェアの企画をいただいたときに、「よっしゃ来たー」という感じで、得意のマシュマロで、個人的に好きなハロをイメージした商品を作ったことがあります。その時に、知識がないと納得できる商品にならないと実感しました。自分が好きだからこそコラボを楽しんで熱を入れてやれるし、ファンにしても、好きな人に手掛けてもらった方が良いんじゃないでしょうか。ハロの商品は2種類、緑はファーストのハロ、ピンクはラクスが持っているイメージです。商品のパッケージに表現できるよう、アニメのシーンを切り出して、「ぴょこぴょこ動いてほしい」と伝えたんですが、ウチの担当者は「はぁ?」みたいな反応でした。今回のイベントでは、準備期間の問題でコラボ商品ができなくて。「なぜできないの」と(副社長に)文句を言った。私はすごくやりたくて、商品イメージもあるのに。次の機会こそはと思ってます。

【写真:竹下社長がこだわったコラボ商品のパッケージ(社長提供)】

 副:今回は時間的に無理だったけど、次はコラボ商品をやらないと、僕が(社長から)首を切られてしまう。

 冒頭から「ガンダム」と「商品開発」への熱意に圧倒される。

アスランと石田彰、どちらが好きなのか分からない悩み

 質問を続けよう。

 記者(以下、記):ちなみに、どのシリーズが好きですか。

 社:私はSEEDとDESTINY、鉄血のオルフェンズ。新しいのから入ってますけど、基本的なものは分かります。ファーストも見たし、Zは映画版も見た。一番はSEED。DESTINYよりSEED。キャラクターがなよなよしているなりに、迷いながらも、頑張っている。どっちかって言ったらキラよりアスランが好きなんですけど、石田彰さんが好きという節もあって、アスランと石田彰さん、どちらが好きなのか分からないのが悩み(笑)。機体はフリーダムが好きなんです。だからSEEDが好きというのもあります。

 記:「舞い降りる剣」神回ですよね。

 社:通常版もHDリマスター版も、どちらの録画も消せなくて残してます。元々は西川貴教さん好きがきっかけでSEEDを見たら、「ガンダム面白いじゃん」っていうのがガンダムへの入り口。大学の先輩に「就職する前にシリーズは全部見とくのが共通言語だ」って言われて、ファーストから見ました。

【写真:会場で設定の10分の1サイズのガンダム立像の写真を撮りまくる社長(右)と副社長】

 社長も副社長も、記者と同い年。社長の話していること、好きなシリーズは私にとっても「ストライク」だ。副社長にも好きなシリーズを聞かねば。

 副:僕は宇宙世紀シリーズ。ファーストからZ、ZZ。小さい頃からロボットのガシャンガシャン(変形・合体)がとにかく好きで。戦隊ものも含めて好きでした。ガンダムは多分、夏休みの再放送とかで見ました。リアルタイムなのは、BB戦士とか、(コミックボンボンの)漫画とか。トランスフォーマーのコンボイ世代でもあります。一番好きなシリーズは、DESTINYかZですね。どちらも捨てがたい。

 社:Zは映画とTVどっちがいい?

 副:(モビルスーツ、モビルアーマーが)変形する衝撃は、昔のZガンダムにあったかな。

見た目はアッガイ

 2人の盛り上がりを見ると、ガンダム愛は関連する仕事を受けたいために自称するビジネスではなく、本物だと伝わってくる。社長から副社長に対し「THE ORIGIN良いよ」などと、作品を勧めることもあるのだとか。

 ここで今回の取材で一番の無茶振り、いきます。

 記:今年はガンダムは放送開始40周年、ブラックモンブランは発売50周年でともにメモリアルイヤー。ブラックモンブランをモビルスーツに例えてくれませんか。

 社:やっぱり私は王道のファーストガンダム(RX-78-2)でいきたい。うちの元祖ですし。

 記:ブラックモンブランのチョコをめくったら、白いですしね。副社長は?

 副:ズゴックですね。若干丸いフォルム、ずんぐりむっくり。

 社:分からんでもない。

 副:色はアッガイも捨てがたい。いや、ズゴックよりアッガイじゃないかな。

 社:見た目だよね。

 確かにフォルムも色もどことなくブラックモンブランを思い起こさせるアッガイ。君の姿は僕に似ている。RX-78-2の「王道」「主役」のイメージもズバリ。即答でもさすがの答えだった。

 ここで2人そろって、ガンダムワールドの会場内へ。人間サイズのガンダム立像を裏側までじっくりと眺めて、スマホでカシャッ。社長はオープニング映像が流れるコーナーを離れようとしない。ずっと見ている。

【写真:会場で、バルバトスのメイスを持って楽しむ来場者】

 社:音楽が聞こえてくると、映像を思い出しますよね。TWO-MIX良いな−。あ、ハロがいる、ハロがいる。「実物大」? こんなにデカいっけ。

人類の想像をかきたて、技術を進歩させるアニメ

 興奮気味、テンションの上がった社長に、最後の質問を。

 記:「ガンダム好き」を、人生や仕事に生かせている面はありますか。

 社:大学で工学部に入ったんですけど、周りに「ガンダムを作りたくて入学した」という人が何人もいたんです。実際に二足歩行のロボットや、宇宙に行くための研究をする人もいて。ガンダムみたいなものを作りたいと思って、技術を発展させていくわけですよ。できないと思うことを可能にしていく、進化の先にはイマジネーションがあって、その世界を広げてくれるのは、ガンダムのような存在だと思う。単なる空想だと思わせないのは、人間臭さとか苦悩とか、日常的で身近に感じられる部分があるから。だからこそ「自分たちも、もしかしたらあの世界に行けるかも」って思わせる。未来の技術を実現できるんじゃないか、って気にさせてくれるアニメです。

 副:ア・ニ・メ・じゃ・ない♪

 社:うちの会社はロボットを作ってるわけじゃないですけど、10年、20年、30年後、人間がどうなるか分かんない。生活スタイルが全く変わるんだろうと思うんですよ。本当にガンダムみたいな世界になることだって全然あると思っていて、念頭に置いたうえでビジネスをやってかないといけない。私たちはお菓子を作ってますけど、その形態は多分変わるだろうなあ、と。食べること自体は人間が生命を維持するうえで変わらないかもしれないけど、タブレットになったりサプリになったり、視覚情報は要らなくて、「嗜好品なんて要らないよ」となる可能性もないとは言えません。その中で私たちが生き残るためには、という事を常に考えてます。

◇   ◇   ◇

 ガンダムは、そのリアルさゆえに、技術の発展やビジネスに影響を与えているのでは―。社長の見解にはうなずけた。半世紀を経て完全に定着しているブラックモンブランも、時代に合わせて思いも寄らぬ変化、進化を遂げるかもしれない。

 そしてガンダム社長の頭の中には、きっとあの次回予告フレーズが流れているのだろう。

 <君は、生き延びることができるか>

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