お母さんが未来を創る 手作り新聞、地域に元気

お母さん業界新聞の全国版(左)と福岡南版 拡大

お母さん業界新聞の全国版(左)と福岡南版

新聞を通じて知り合った女性たちと交流会で語り合う宮下彩さん

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 地域のお母さんがペンを執って子育ての喜びや生活情報を発信する‐。その名も「月刊お母さん業界新聞」。全国で約10万部を発行し、地域版も続々と誕生している。九州では福岡県と佐賀県の15人がそれぞれ編集長となり、9月に一斉創刊した。親の目線で「子どもたちのための社会づくり」を呼びかける。

 業界新聞は、子育てミニコミ紙を手掛けていた横浜市の藤本裕子さん(57)=福岡県久留米市出身=が2008年に創刊した。子育てを「未来を創る大事業」として楽しもうという考え方が共感を集め、約400人のお母さん記者が参加する。

 地域版はB4判の紙1枚の表裏を使った手作りの瓦版。福岡県筑紫野市の宮下彩さん(34)も長女(6カ月)を出産後の育児休暇がきっかけで「福岡南版」を始めた。記事にするのは、子どもの表情や身近な母親のインタビュー、薦めたい本など。毎月500部を作製し、知人をはじめ、地元の施設や店にも配布する。伝えたいのは「子育ては『今』しかない宝物で輝いていて、こんなにもいとおしい」ということだ。

 宮下さんが業界新聞を知ったのは、長男(3)を産んで間もないころだった。

 勤務先は病院で、ソーシャルワーカーとして新部門の立ち上げを任され、出産の2週間前まで働いた。

 産休に入ると一転、乳腺炎と寝不足に苦しみ、家の中で長男だけと向き合う日々。「おっぱいをあげては大量のおむつを洗う。息子はかわいいけれど、同じことの繰り返しに意味を見いだせませんでした」。そんな中で藤本さんの講演を聞き「未来を創っているお母さんはすごい」という言葉に涙がこぼれたという。

 少しずつ母親であることを楽しむようになり、記事を書き始めるとさらに意識が変わった。日常のドタバタに一喜一憂するのではなく、子育てを客観的に見つめられるようになっていく。行動力も芽生え、藤本さんを講演会に招くため、娘をおんぶして協賛を募って回った。

 藤本さんは「これこそがお母さん業界新聞の狙い」と声を弾ませる。「ペンを持つことは責任を伴う。女性が社会とつながり、さまざまな経験を経て自立することが、地域の活性化にも結びつくのです」

 宮下さんは紙面を飛び出して、ほかのお母さん記者や読者との交流会も企画している。今月12日は福岡市で開催。子どもを連れて集まった6人は、自己紹介に続いて「初めての日」をテーマに語り合った。子どもと笑顔で向き合うために‐と、藤本さんが提唱するキーワードだ。

 「こたつを出した日に娘がジュースをこぼしたの。でも『初めてコップを倒した!』と思ったら、うれしくて」「ガミガミ怒ってしまったのに、翌朝はにっこり。初めて息子にはかなわないと思った」。失敗も悩みもさらけ出すことで、一気に距離が縮まった。

 「毎日の何げない幸せに気付くことで人生は豊かになる。そんな思いをたくさんのお母さんと共感したい」と宮下さん。来年4月には職場復帰する予定だが、等身大のままで地域版作りを続けたいと思っている。

 お母さん業界新聞=045(444)4030。


=2013/11/23付 西日本新聞朝刊=

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