【子どもの貧困を考える】スクールソーシャルワーカーの力

スクールソーシャルワーカーの奥村さん。取材中も、学校などから相談の電話が頻繁にかかってきた 拡大

スクールソーシャルワーカーの奥村さん。取材中も、学校などから相談の電話が頻繁にかかってきた

 福岡県内で活動するスクールソーシャルワーカーの奥村賢一さん(36)は、数年前に担当した親子のことが忘れられない。

 ある中学校から相談があった。「3年生の女子生徒が不登校気味だ。家庭訪問しても親に会えない。ネグレクト(育児放棄)の恐れがある。将来を考えれば、親子を分離した方がよいのでは」という内容だった。

 奥村さんは、学校で担任と女子生徒と面談した。担任はしきりに心配していたが、生徒の表情はさえない。二人きりになったとき、生徒は深いため息とともに漏らした。「あいつは(担任)は何も分かっていない」‐。

 詳しく聞いた。母親は夫の暴力から逃れるために離婚。パートを掛け持ちしながら朝から晩まで働いていた。代わりに女子生徒が、高校生だった兄、小学生の弟、未就学の妹の食事や洗濯をしていた。「お母さんを助けるため。自分の意思でやっている」。母親を悪者にして「かわいそう」と同情されるのが許せなかったのだ。

 母親とも面談した。仕事でくたくたになりながら、実家の両親の介護もしなければならない事態に陥っていた。「次から次に不幸が押し寄せる。無理心中した方が楽に…」。母親は燃え尽きそうになっていた。

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 奥村さんの動きは早かった。まず、ハローワークと連携。母親は正社員の事務職に就くことができた。別れた夫の借金を抱え込んでいたが弁護士に依頼。消費者金融に過払い返還請求をしながら整理した。介護はケアマネジャーに相談。介護老人保健施設とホームヘルパーによる在宅介護に分散させた。

 深夜徘徊(はいかい)を繰り返していた長男とは膝詰めで話し合った。高校を中退し、定時制に通いながらアルバイトで家計を支えるようになった。保育所に協力を求め、4歳の末っ子の送迎をバスでしてくれるようにした。女子生徒も放課後の個別の補習で学習の遅れを取り戻していった。

 関係機関や公的サービスをつなぐことで「負の連鎖」から抜け出した。「子どもたちが置かれた環境を改善しながら、自分の力で一歩前に踏み出してもらうのを支えるのが私たちの仕事なんです」と奥村さんは言う。

 不登校や非行、児童虐待…。子どもが抱える問題の背景には家庭環境や経済的事情が大きく影響するとされる。家族や親にアプローチしながら問題解決を図るスクールソーシャルワーカーには福祉の専門性が求められるが、社会福祉士や精神保健福祉士の資格がある人材は、そう多くない。専門性の高い人材を養成するシステムづくりが急務だと考える。 (東伸一郎)

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 【ワードBOX】スクールソーシャルワーカー

 学校だけでは対応が難しい子どもの問題を解決するため、児童相談所や福祉事務所、警察など関係機関との間を仲介する。2008年度に文部科学省が初めて予算化した。13年度は全国155自治体に1355人が配置されているが、人材不足が指摘される。日本社会福祉士養成校協会が認定する養成カリキュラムを持つのは、全国の福祉系大学・短大・専門学校265校のうち29校にとどまる。


=2013/11/23付 西日本新聞朝刊=

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