福岡発の医学雑誌「臨牀と研究」創刊90年 医師有志編集支え

「臨牀と研究」11月号を手に「創刊100年を迎えるのが次の目標」と話す古山正史さん=九州大学医学部内の編集室 拡大

「臨牀と研究」11月号を手に「創刊100年を迎えるのが次の目標」と話す古山正史さん=九州大学医学部内の編集室

 九州大学医学部(福岡市東区)内に編集室を置く「大道学館出版部」が発行する月刊総合医学雑誌「臨牀(りんしょう)と研究」が、20日発行の11月号で創刊90年目を迎えた。診療に役立つ論文や症例報告を掲載しており、発行数は4千~6千部。全国の開業医や勤務医に読まれている。出版部主幹の古山正史さん(67)は「ここまで来られたのは、医師を中心に多くの人の支援があったから。経営は厳しいが、役立つと評価される限り続けたい」と話している。

 古山さんの父の正朔(しょうさく)さん(故人)と、正朔さんのいとこで医師の河原治作さん(同)が1924年11月、前身の「實地醫家(じっちいか)ト臨牀」を創刊。当時、九州に総合医学雑誌はなく「地方文化の発展のためには東京でなく福岡で作らなければ」と始めた。

 編集室は今の福岡市・天神地区にあったが、戦災で焼失。正朔さんと親交があった九大医学部の法医学教授に法医学教室の空いた部屋の利用を勧められ、以来、法医学教室内に編集室(今の広さは約10畳)を借り続けている。古山さんは「この雑誌が長年続いているのは、九大が発行しているのではないかと多くの人が勘違いしているのも理由の一つ」と笑う。

 戦争中の紙不足や裁断機など鉄製品の供出にも耐え、休刊は一度もない。「製本できずに二つ折りにしただけの状態で出版したこともあった」と古山さん。

 長年にわたって同誌の質に貢献しているのが企画・編集委員たち。九大医学部卒の医学者らがほぼボランティアで交代で担い続けており、現在は久保千春・九州大学病院長や杉町圭蔵・元九大医学部長など8人が担当。月1回集まって特集のテーマを決め、執筆者を選定。記事となる座談会の司会なども務めている。

 常勤スタッフは古山さんを含め5人。25歳から続ける古山さんは「症例報告の原稿も全国各地の医師から月10件以上寄せられる。どれもが自分の診療経験が世の中の役に立てばとの思いがこもっており、それを手にするたび、多忙な診療の中で執筆にいそしむ医師の姿が思い浮かび、感慨無量になる」と話している。

 この1年の特集で取り上げたのは、乳がん、心房細動、脳卒中、腎疾患、在宅医療など。通算1066号となった11月号は特集が「白血病・悪性リンパ腫」。A4判232ページ。2500円。全国の主要書店で販売。大道学館出版部=092(651)4003。


=2013/11/29付 西日本新聞朝刊=

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