【こんにちは!あかちゃん 第11部】脱「お産難民」 産科医療は今<番外編>次の危機は10年後か

お母さんに抱かれてすやすやと眠るあかちゃん。産み、育てやすい安定した環境が求められている 拡大

お母さんに抱かれてすやすやと眠るあかちゃん。産み、育てやすい安定した環境が求められている

 産科医療の今を追った連載企画「脱『お産難民』」(13~15、20~22日付)の終了後、取材した医師からメールが届いた。「次の危機は10年後に来るはずです」-。確かに、産科医不足が社会問題となった数年前に比べると、少しずつ改善が進んでいた。ただ、対処療法では安定した「産む環境」は得られない。今後に向けて、あらためて現状と課題を整理してみた。

 全国で産科施設の閉鎖が目立ち始めた2005年ごろから、国や自治体、日本産科婦人科学会などが産科医確保のためにさまざまな対策を打ち出した。

 その結果、10年には同学会に新規入会した産婦人科医が、過去10年の最多を記録する。厚生労働省の調査でも産科、産婦人科を主な診療科とした医師の数は、06年を底に回復している。

 ところが、この間の医師の増減を都道府県別に見ると、大都市に極端に偏っている。同調査の06年と10年の比較では、東京(163人増)や大阪(87人増)は大きく増加しているが、九州では7県のうち4県で減少。長崎と熊本は5人減、佐賀3人減、鹿児島2人減で、増加した福岡も14人増にとどまり、宮崎2人増、大分1人増となっている。

 データの示す通り、取材で何人もの医師から「地域差が問題」と指摘された。地域によって課題が大きく違うため解決策も異なる。他都市での成功事例を導入したからといって、うまくいくとは限らないのだ。

 例えば、妊婦の搬送先が見つからない「たらい回し」は、地方では起こりにくい。搬送する高度周産期施設の選択肢がないからだ。医師の労働環境を改善するため、各地で進められた拠点病院への「医師の集約化」も、地方では「もうこれ以上の集約先がない」という状況に陥っている。

 地方の周産期医療を支えてきた開業医の高齢化も課題だ。都市部では病院での出産がほとんどという中、九州は診療所での出産が7~8割を占める県もある。この医師たちが60~70代になってお産を扱わなくなってきた。分娩(ぶんべん)数の制限を始めた60代の開業医は「若い時はなんとかやってきたが、もう体力が持たない」と話していたのが印象的だった。

 開業医の世代交代で解決するのでは-と、40代の勤務医に尋ねてみた。「少子化はますます進む。妊婦の高齢化でハイリスク出産も増えている。1人で責任を負わなければならない開業に踏み切るにはリスクが大きい」との答えだった。

 10年後、若手医師の6割を占めている女性が、最も主力となる30~40代に差し掛かる。出産や育児で職場を離れてしまえば、担い手が不足する。この危機を回避するには、誰もが働きやすい環境をどれだけ整えられるかにかかっている。

 連載で取り上げた助産師や地域の力を生かす取り組みのほか、現在の主治医制を見直して4~5人のチームで診療して負担を軽減するなど、システム全体を抜本的に変える必要もあるだろう。

 危機になってからでは遅い。安心して産み、育てられる地域を守るために何ができるか、私たちも考えなければならない。

 ●産科医数 増加したが 都市部への集中 課題

 激務や訴訟リスクの高さなどを理由に、産科を志す若い医師が減少した。2004年導入の新臨床研修制度で都市部への集中も課題に。厚生労働省の調査では、産科・産婦人科を主な診療科とした医師は1994年に1万1391人だったが、2006年には1万74人で、約12%減少した。その後は増加に転じ、10年には1万652人に回復した。

=2013/11/30付 西日本新聞朝刊=

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