【人の縁の物語】<44>里親支援 絆を紡ぐ NPOの宮本さん 「家庭のぬくもりを」

生みの親と育ての親の愛情を描いた絵本を手にする宮本智子さん。里親に紹介することもあるという 拡大

生みの親と育ての親の愛情を描いた絵本を手にする宮本智子さん。里親に紹介することもあるという

 血縁はなくても親子の縁は紡いでいける。その手伝いができる喜びを感じながら、福岡市の宮本智子さん(53)は、里親の支援活動に取り組むNPO法人・子どもNPOセンター福岡で事務局長を務めている。関わってきた親子は50組超。初めは不安そうだった親子が日々の生活を通して信頼を築き、表情が豊かに輝き出す姿をそばで見てきた。

 「親子げんかをした」と相談されれば「どこの家でもあるよ」と励ます。子どもを家庭に迎えてすぐは、ささいなことでも神経質になる。喜ばせたい一心でお菓子を与えすぎていれば「受け入れるのと何でもOKは違うよ」と諭すことも。

 「親戚のおばちゃん」のような立場で、主に里親や特別養子縁組をした家庭の支援に携わっている。

 その一環として情報交換の場「里親サロン」を定期的に開く。20~30人が参加し「生みの親ではないという告知はどうしよう」「反抗期なのか無視される」といった悩みを語り合い、経験豊富な先輩里親がアドバイスする場だ。

 正解はなく、手探りで見つけるしかない。その中で宮本さんが必ず伝えるのは「完璧を目指さなくていいよ。肩の力を抜いて自然体で」。親が追い詰められると、子どもにも影響すると考えるからだ。

 里親支援には2005年から関わっている。児童虐待や育児放棄が社会問題となる中、福岡市から子どもNPOセンター福岡に要請があって引き受けた。

 ただ、当初は戸惑いの方が大きかった。センターは各地の子ども育成団体の連携を深めようと、04年に法人認証を受けた組織。里親支援は専門外で「福祉の専門家でなくていいのか」との思いがあった。

 そこでお盆の期間だけ里親になる活動に参加してみた。預かったのは2歳の女の子で家庭の雰囲気に慣れておらず、初日は食事も口にしなかった。甘え方も分からないのか、出掛けた動物園では抱っこをせがまず、一人で懸命に歩いていた。

 「施設で暮らす子が成人して困るのは、家庭や夫婦といったイメージが持てないこと」という施設職員の話を思い出した。里親の必要性をあらためて感じ、活動の原動力になっている。

 宮本さんは高校生時代から、舞台芸術を通して健全育成を目指す子ども劇場に携わってきた。大学卒業後もスタッフとして関わり、2人の娘を育ててきた。

 忙しさのあまり、娘の存在を「空気のようで、ありがたさを忘れてしまう」こともあった。今、壁にぶつかりながらも親子の絆を深めていく里親家庭に接することで、子どもや家族の大切さを再認識させられているという。「家族はあったかくて、ほっとする存在。心のよりどころですね」

 今後は里親や特別養子縁組の周知活動にも力を入れるつもりだ。理解のない人もいて、周囲への伝え方を迷う親も多いという。また、赤ちゃんを授からなかった人たちにも親になる選択肢の一つにしてほしい。

 「多くの子どもに家庭のぬくもりを味わってもらいたい」-「親戚のおばちゃん」の何よりの願いだ。


=2013/12/03付 西日本新聞朝刊=

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