花火でお知らせ、迷惑? 運動会開催の合図 都市部で増える苦情

友好紙 夕刊

 「どうして運動会の日の朝に花火を鳴らすの?」。聴覚障害があり、破裂音が苦痛だという訴えが河北新報(仙台市)の「読者とともに 特別報道室」に寄せられた。宮城県内で取材を進めると、花火の打ち上げは県内全域に広がる風習だが、音に過敏な最近の社会風潮を反映し、都市部を中心に途絶えつつあることが分かった。

 県内の小中学校では毎年春か秋に、学校独自の運動会や地域住民も参加する学区民(地区民)運動会が開かれる。打ち上げ花火は当日早朝、校長や町内会長らが開催を決めたことを住民に知らせる合図。複数の学校関係者によると通常午前6時~6時半ごろ、花火業者が打ち上げる。費用は1回につき約1万円で、各自治体の公費で賄われる。

 起源をたどる。郷土史家の故逸見英夫さんの著書「仙台はじめて物語」によると、1896(明治29)年10月16日に宮城野原陸軍練兵場(現宮城野原公園総合運動場周辺)で仙台市内9小中学校の連合運動会があり、午前6時に花火が打ち上げられたと記述がある。

 市歴史民俗資料館によると、市内ではこの4年前、旧陸軍第二師団が戦死者を慰霊して銃剣術などを競う招魂祭を実施。開始前に花火を打ち上げたことが分かっている。渡辺直登学芸員は「連合運動会は、祭礼のために打ち上げた招魂祭の流れをくんだのではないか」と推察する。

 1900年の小学校令改正で体操が必須科目になり、各校に運動場設置が義務付けられると、学校対抗戦だった連合運動会は学校単位で開かれる運動会に変わった。これにより、花火も各校で打ち上げられるように。東北各県教育委員会によると、花火を打ち上げる伝統は6県全県にある。

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 その破裂音に苦悩する住民がいる。

 自閉スペクトラム症で聴覚が過敏な仙台市の女性(31)は「予告なしに鳴るので、びっくりして怖くなる」と強い不安を訴える。東北文化学園大の高卓輝(たかとうひかる)教授(聴覚障害)は「聴覚過敏の人は音をより大きく感じる。当事者には大変な苦痛なので、社会が配慮する必要がある」と指摘する。

 仙台市教委などによると、夜勤明けの住民から「うるさくて眠れない」と学校に苦情が来ることも珍しくないという。このため全小中学校を対象に打ち上げ状況を調査したところ、186校中90校が見送っていることが分かった。

 その一つ、JR仙台駅に近い同市の東六番丁小は「周辺にマンションが立ち並び、花火を上げるのが難しい」と話す。都市化する立地環境に対応し、他の学校でも保護者宛ての電子メールの一斉送信や町内会組織の連絡網を使うなど、代替手段に切り替えつつある。

 元県小学校長会長で、現在は同県岩沼市教育長の百井崇氏は「朝のせわしない時間に弁当を作るかどうか気をもむ家庭もあり、瞬時に広範囲に伝わる花火は効果的だ。年に一度だけの『地域のお祭り』と考え、見守ってもらえないだろうか」と考える。

 一方で、宮城県南の小学校の元校長(66)は「今は花火どころか、休み時間の児童のはしゃぎ声さえ問題視される時代。運動会の朝の風習は、仙台市中心部のようにいずれはなくなるのだろう」と話す。 (河北新報・桜田賢一)

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