空き時間で手軽 労働にリスク 料理配達サービス「ウーバーイーツ」

友好紙 坂本 信博

 米配車大手ウーバー・テクノロジーズが手掛ける料理配達サービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」が、国内の都市部に広がっている。スマートフォンの専用アプリで注文した料理を「配達パートナー」が届けてくれるサービスで、副業として働くサラリーマンや空き時間で手軽に稼ぎたい人たちが配達を担う。新しい働き方「シェアリングエコノミー」として注目されるが、働く際の保障が不十分なことは知られていない。事故当事者となった配達パートナーは「自由度が高い分、負っているリスクも大きい」と話す。

 ウーバーイーツは国内では2016年に東京都で始まり、現在は横浜市、神戸市、福岡市など全国11都市で展開。配達パートナーには、ウーバー社が手数料を差し引いた報酬が支払われる。ただし、配達パートナーはウーバー社と直接的な雇用関係にないため「個人事業主」として扱われ、配達中の事故の際も労災や休業補償は受けられない。

医療費は自己負担
 2月下旬、京都市内を自転車で配達中に転倒し、鎖骨を折った男性(37)は「医療費はすべて自己負担。けがが治るまで配達の仕事はできないし、収入が途絶えてしまった」と話す。

 男性は1月に勤めていた飲食店を辞め、配達パートナーとして働き始めた。1日平均約20件の配達をこなし、70キロ以上を自転車で走り回る「肉体労働」。報酬は多い時で1日約1万2千円、少ない時は4千円ほどで「時給に換算すると最低賃金を下回ることもあった」。今後に手術も控えているといい「治療費はすでに5万円近くかかった。事故を起こしてリスクの大きさが骨身に染みた」と肩を落とす。

「保障なし等しい」
 ウーバー社によると、自転車の配達パートナーに対し、配達中に発生した交通事故に限り、相手方の損害を1事故あたり上限1億円まで補償する対人・対物賠償保険を同社でかけている。ただし、配達先からの帰路や注文を待っている時などは対象外という。

 またウーバー社は、個人事業主として働く配達パートナーと料理店の仲介を行っているという形態のため、配達中の事故であっても配達パートナーに労災保険は適用されない。ウーバー社の担当者は「警察とも連携し、ヘルメットの着用や交通事故防止を配達パートナーに呼びかけている」と説明する。

 日本労働弁護団常任幹事の川上資人弁護士(東京弁護士会)は「時間や場所に縛られない柔軟な働き方は魅力的に映るかもしれないが、労災保険がないことをはじめ、働く人に対する保障が何もない状態に等しい」と指摘する。川上弁護士によると、フランスでは16年8月に法律を改正し、ウーバー社のように仲介を行う企業に対し、労災保険や職業訓練の費用負担、団体交渉に応じることなどを定めたという。

 川上弁護士は「シェアリングエコノミーの実態は、仲介企業が手数料を徴収して利益を上げる一方で、企業の社会的責任を果たさず、リスクを個人に押し付けている。日本でも今後、トラブルが増えてくるのではないか」と話している。(京都新聞)

       ◇       ◇

市がウーバー社に安全啓発も 九州初展開の福岡市
 福岡市では昨年11月末、九州初、国内9都市目としてウーバーイーツの配達サービスがスタート。博多、中央、南、城南、早良区を含む一部地域を対象に、もつ鍋、ラーメン、ピザ、エスニック料理、コーヒーなど、375以上の飲食店から1回380円の配達料で届けている。

 ウーバー社は利用者数や配達パートナー(配達員)数を公表していないが、西日本新聞「あなたの特命取材班」が入手した資料によると、天神地区からの注文者が多い。今春は、お花見スポットとして人気の中央区の舞鶴公園や西公園に、料理を届けてもらう利用者も多かったようだ。

 一方、市生活安全課によると今年1月、「配達用リュックを背負ってスピードを出して走る自転車がいた」と報告があり、市職員が市内の同社事務所を訪問。市自転車安全利用条例の順守などを求めた。

 これを受けて同社は、天神地区・渡辺通りの西側歩道が「押し歩き推進区間」に指定されていることなどを配達員に改めて周知したという。配達中の事故件数は公表していない。

 福岡県警によると、宅配用自転車による事故件数は統計がないという。市は「今後も、自転車を使う個人と事業者に安全な利用を啓発する」としている。(坂本信博)

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ