【こんにちは!あかちゃん 第12部】産みやすい職場とは<2>ヒアリングで寄り添う

出産を機に店頭販売から統括職場に異動した元満千鶴さん 拡大

出産を機に店頭販売から統括職場に異動した元満千鶴さん

 時にはお茶を飲みながら1時間を超えることもあるという。福岡市の辛子めんたいこ製造販売「ふくや」で、出産を控えた社員へのヒアリングはアットホームな雰囲気の中で行われる。育児休業から復帰する前後、さらに子育て中も同様だ。

 《ふくやは福岡県内を中心に約40店舗を構え、パートも含め約600人の従業員を抱える中堅企業。全国的には出産後も働く女性が4割に満たない中(グラフ参照)、200人以上いる正社員に限ると9割近くが復職している。その鍵を握るのがヒアリングだ》

 4年前に第1子を出産した元満千鶴さん(41)も、育休から復職にあたって会社側と十分に話し合った。

 出産までは販売の最前線を担う店舗勤務が長かった。接客ノウハウは社内トップクラスで店長も任されていた。その分、店頭の大変さも身に染みていた。限られた人数でシフトを回さなければならない中、もしも子どもが急に熱を出したりしたら、迷惑がかかるのではないか…。

 育休法では原職復帰の原則があるが、ヒアリングで正直に不安を伝えた。不遇な扱いも覚悟の上で。しかし、会社側は統括部門への配置転換を提案する。デスクワークが主で、育児をしながら働きやすい部署だった。

 「会社がじっくり耳を傾け、寄り添ってくれたから働き続けられたと思っています」

 《辛子めんたいこ発祥の店として、戦後間もなく創業した。この老舗を率いる川原正孝社長(63)の持論は「育った人材が結婚・出産を機に会社を去るのは損失」だ。1992年に育休法が施行される以前から「定年まで勤めてもらう」ための方策を考えて続けてきた》

 「初めのころは、結婚相手に『辞めさせないでほしい』とお願いしていた」と川原社長は笑う。育休法の施行後は、短時間勤務や土日出勤の免除など制度面を積極的に整備してきた。

 とはいえ、生まれてきた赤ちゃんの健康状態や夫の転勤など「両立」していくには不測の事態が付き物だ。制度だけでは対応できない面もある。そこでヒアリングを充実させていった。

 話を聞く際には、人事課マネジャーの山中崇彦さん(41)と女性スタッフが2人一組になって実施する。「自宅近くに保育所はありますか」「預けた後、どの職場までなら通勤できますか」…。正社員だけでなく、パートにも同様に対応している。

 悩みや要望を聞くだけではない。「産婦人科の待合室で積極的に妊婦さんに声を掛けて」といったアドバイスもする。同じ時期に出産するなら、近所で母親仲間になれる絶好の機会になるかもしれない。赤ちゃんの入浴法、誤飲の対処の仕方を教える保健所や消防署による講習会も案内している。

 山中さんは「きめ細かに話を聞き、心の内をはき出してもらう。不安解消や要望の実現に可能な限り応えていきたい。それが社長からの厳命ですから」と話していた。


=2013/12/11付 西日本新聞朝刊=

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