就活で持病申告必要ですか? てんかん薬服用「偏見持たないで」

友好紙

 短大1年の娘がいる50代の母親から、信濃毎日新聞(長野市)の「声のチカラ」(コエチカ)取材班に質問が届いた。「就職活動でどの程度、持病について会社側に伝えればいいのでしょうか」。娘はてんかんがあり、薬を服用しているという。「申告すると採用面で不利益になるのではないか」と心配する母親。そもそも申告の必要はあるのだろうか。長野県内の採用現場を調べてみた。

 てんかんは、突然意識を失って反応がなくなる「てんかん発作」を起こす脳神経の病気。幼少期に発症することが多い。医師などによると、患者は100人に1人の割合でいるとされ、投薬などの適切な治療をすれば、発作を抑えるなど症状は改善する。

 母親によると、娘は今年就職活動を予定。過去には発作で意識をなくすことがあったが、薬を服用するようになり、ここ数年はない。今は自動車学校に通い、運転免許の取得を目指している。

 企業が2021年3月卒業者向けの説明会を始めるのはこの3月。就活関係の催しに参加する機会も増えており、その際に書く履歴書で、てんかんについて触れるべきなのか、親子で悩んできた。

 厚生労働省や長野労働局によると、履歴書や面接などで、てんかんを含む持病を申告する必要はない。

 厚労省は雇用主に対しても、採用時にてんかんの有無などを尋ねることは、運転が主業務となる公共交通機関や配送業などを除いて就職差別につながるとしている。

 長野県内の企業の採用担当者に尋ねてみた。八十二銀行(長野市)やセイコーエプソン(諏訪市)は、履歴書に持病についての記入欄はなく、面接でも尋ねないという。県職員の採用でも「履歴書や面接などで持病について聞くことはない」(人事委員会事務局)。

 就職後、発作が起きるなどして病気について企業側が知るケースも。その場合も、厚労省によると説明のつかない配置転換などは当然、問題になり得る。八十二銀行やセイコーエプソンは本人の意向も確認し、必要があれば異動などで配慮するという。

 信州大病院(松本市)でてんかん外来を担当する福山哲広医師(47)は「(過去2年以内に発作がなく、医師が認めるなどして)運転免許を取得できる患者は、通院していれば発作の可能性はゼロに近い。『急にけいれんして倒れる』というイメージだけが先行している」と話す。

 その上で、幼少期に発作が起きた結果、親が周囲の目を恐れ、病気について子どもに詳しく伝えていない事例も少なくないと指摘。「患者自身が病状を把握し、会社などに説明できるようにしておくことが大切」と助言する。

 現在は就職活動に向けた準備をしている娘さん本人が記者に手紙を寄せてくれた。3カ月に1回の通院などができれば、仕事や生活に問題はないとした上で、企業や社会に対し「てんかんについて知ろうとしないまま、偏見を持たないでほしい」と願っていた。 (信濃毎日新聞・島田周)

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