【こんにちは!あかちゃん 第12部】産みやすい職場とは<6完>勤務シフト「57パターン」

打ち合わせをする芳野病院の(左から)岩村美奈子さん、大坪文代さん、原田梨恵さん 拡大

打ち合わせをする芳野病院の(左から)岩村美奈子さん、大坪文代さん、原田梨恵さん

 時には「この時間帯は働けない」といった希望に応え、新しいパターンを考える。そうして働き続けやすい環境を追求してきた結果、北九州市の芳野病院(143床)の勤務シフトは57種類を数えるまでになった。

 《開業100年を迎えた芳野病院は、人工透析や脳神経外科など20の診療科を持ち、地域の中核医療を担う。職員数は約270人。「働きやすさ」が評価され、採用希望者が後を絶たないという》

 看護師の安藤由香さん(38)も5年前、熊本市内の総合病院から転職してきた。ちょうど親が病で倒れたころで、自身はあかちゃんを授かる。介護の時間が必要な一方、身重で長時間の勤務が難しい時期もあった。

 そこで「57パターン」に助けられた。外来開始の2時間前の午前7時に出勤して午後3時に切り上げるパターン、午後1時から働いて6時間勤務で終われるパターン…。家庭の事情に合わせて選択でき「この病院でなかったら看護師を辞めていたかもしれない」と感謝する。

 その分、管理する側の調整は複雑になる。23人の看護師をまとめる病棟科長の岩村美奈子さん(44)も「こちらが立てばあちらが立たず…。むちゃくちゃ大変です」と毎月のシフトづくりに頭を悩ませている。

 1人につき三つまで出せる希望に目配りし、感染防止など外せない研修は優先しなければならない。そんな振り分け作業にも「恩返しの気持ち」で臨む。自身も3人の子を育てながら働く母親であり「57パターン」に助けられてきたからだ。

 《結婚や出産で離職する20代後半~30代女性が後を絶たず、就業率が落ち込む「M字カーブ」はいまだに改善されていない(グラフ参照)。本来なら職場で主力となる年代。特に看護師は体力、技術の両面で充実してくるころで、芳野病院は30歳前後がいかに働き続けられるかを念頭に対応してきた》

 その結果、この10年で職員数が100人ほど増え、2010年には診療報酬が上乗せされる「入院患者7人に対し看護師1人」の配置を達成した。人材開発にあたるWLB&ダイバーシティ推進室の小川美里室長は「看護水準を保つことにつながっています」と胸を張る。

 それでも命を預かる医療現場では、想定外や緊急の事態が日常茶飯事。「57パターン」でも足りず、どうしても独身者に負担のしわ寄せがいってしまうケースも出てくる。「そこは相互扶助の精神で」と大坪文代看護部長(61)はきっぱり。

 それは子育てや介護をしながら働く側にもいえることだ。05年導入の短時間勤務を、病棟看護師で初めて利用した病棟科長の原田梨恵さん(33)は「コミュニケーションを密にして、お互いの立場を理解しあっていきたい」と強調する。

 相互扶助が職場のチームワークを育み、組織に活力を生み、生産性が向上し、ひいては経営面でプラスに働いていく-。芳野病院のチャレンジは続く。

 =おわり


=2013/12/17付 西日本新聞朝刊=

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