和食 未来につないで 著名3料理人が福岡でイベント 「食生活見直しを」

「だし」や和食の未来について語り合う(左から)三國清三さん、上柿元勝さん、村田吉弘さん 拡大

「だし」や和食の未来について語り合う(左から)三國清三さん、上柿元勝さん、村田吉弘さん

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが決まった「和食」。その意義も含めた「食の現在・過去・未来」について、日本を代表する料理人が語り合うイベントが1日、福岡市の中村調理製菓専門学校であった。一般社団法人全日本・食学会の主催。ジャンルを超えて集った3人は、食文化を未来につなぐために、食生活の見直しや食育の大切さを訴えた。

 顔をそろえたのは、フランス料理家で長崎の「カミーユ」オーナーシェフの上柿元勝さん▽東京の「オテル・ドゥ・ミクニ」オーナーシェフの三國清三さん▽京都の老舗料亭「菊乃井」3代目主人の村田吉弘さん-の3人。修業時代の20代のころからの友人で、食の未来について何度も語り合ってきたという。それぞれが「だし」をテーマに調理を披露した後、ディスカッションに入った。

 村田さんは日本料理のだしについて、昆布から出るグルタミン酸とかつお節から出るイノシン酸が合わさって相乗効果が生まれ、8倍のうまみになると解説した。昆布やかつお節がなくても、二つの要素を多く含むドライトマト、ドライモリーユ(アミガサタケ)、鶏胸肉を使えばうまみを出せるとし「和だし」づくりを実演。「料理は化学。世界中どこでも日本料理は作れます」と話した。

 シンプルな日本のだしに対し、フランス料理のだしは複雑でさまざまなものが入っているという。オマールエビのフォンを披露した上柿元さんは「欧州は硬水で日本は軟水。トマトの味や玉ネギの甘み、素材もすべて違う。現地のレシピを持ってきてもうまくいかないので、工夫を凝らしている」と説明した。

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 村田さんは日本料理アカデミー理事長として、和食の無形文化遺産登録を先頭に立って進めてきた。だが実は、2010年にフランスの美食術が先に登録されたのを知り「日本も挑戦すべきだ」と進言したのは、三國さんだったという。

 村田さんは、今回登録された和食の定義をこう説明した。「正月におせちと雑煮を食べる、唐津くんち(佐賀)でアラの姿煮などのごちそうを客に振る舞う、東北で町内ごとに行う芋煮会など『和食を中心に日本人が育んできた文化』」

 ところが、日本の食料自給率は39%まで低下し、米やしょうゆ、みその消費も年々減少している。地域で受け継がれてきた食の風習も薄れつつある。「登録は全世界に向けてこの文化を維持し継承していくと約束したということ。先祖代々食べてきたものをこの50年で変えてきた。それでいいのか。食生活を見直す機会にすべきだ」と強調した。

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 3人は、学校で講演会を開くなど食育にも力を入れている。上柿元さんは、一人で食べる「孤食」や、好きな物だけを食べたり、朝ご飯を食べなかったりなど「現代の食は大きく乱れている」と指摘する。このため、幼いころから人工的な保存料や着色料、化学調味料を摂取し続けることで、大人になっても味が分からない人が増えていると危機感を抱く。

 食育については「5歳ごろから成長と同時にしていくべきだ。舌で味を感じ、きちんと言葉で表現する-そんな中からコミュニケーションや相手への思いやりなどが生まれてくる」と力を込めた。

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【ワードBOX】全日本・食学会

 日本の食文化を育み、発信することを目的に、食に従事する人たちをジャンルや地域を超えてつなごうと2012年に設立。食をテーマにしたシンポジウムやキッチンカーを使った東日本大震災復興支援イベント、料理学校での勉強会などを行っている。九州でのイベントは今回が初めて。


=2013/12/18付 西日本新聞朝刊=

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