感染ゼロだからこそ岩手県ピリピリ? 親の葬儀県外からの参列拒否

友好紙 夕刊

 東京在住の岩手県出身女性から、新型コロナウイルスの感染防止を理由に実父の葬儀への参列を拒まれたと岩手日報(盛岡市)の特命取材班に情報が寄せられた。岩手県は「葬儀は不要不急の外出に当たらない」との認識だが、親族や葬祭業者が県外からの参列を控えるよう求めるケースが相次いでいる。女性は、全国で唯一の県内感染者ゼロが原因として「地域全体が過剰に自粛している」と対応に疑問を呈している。

 女性は岩手県央部出身で、緊急事態宣言が出ていた5月上旬に父親を亡くした。急いで帰省しようとすると、親族から「参列者に迷惑が掛かる。戻って来ないで」と言われたという。

 女性に発熱などの症状はなく、県に問い合わせたところ「親族死亡の場合は不要不急の外出には該当しない」と回答があった。親族に告げると、葬祭施設に県外からの参列は遠慮するよう張り紙があるとして再び拒まれた。納得できずに葬儀に合わせて帰省したが、家族から「感染が広がったら自分たちはここに住めなくなる」と懇願され参列を諦めた。女性は「親の死に顔も見られないのは異常だ。感染者1号になるのが怖くて地域全体が過剰な自粛や差別を生んでいる」と訴える。

 県葬祭業協同組合によると、県外からの参列への対応は各業者の判断に委ねているのが実情だ。最終的な判断は家族に任せるケースが多いとみられるが、青柳均理事長は「遠方からや県を越えての参列はご遠慮くださいとの告知は多々見られる」と業界内に敬遠する向きがあることを認める。

 背景には感染者が出た場合の風評被害の懸念がある。各業者は3密を避け参列人数の制限など感染対策を講じているが、葬儀や会食の規模縮小は大幅な減収になる。その状況で感染者が出れば利用者が一気に離れ、経営が立ちゆかなくなるという訳だ。

 「感染者が出た施設で葬儀はしたくない。差別かもしれないが、そんな思いはないと言えるだろうか」。青柳理事長は県外の人も参列できるようになってほしいと願いつつ、業界の苦悩を代弁する。越県移動の自粛が解除されても傾向は大きく変わらないとみる。

 盛岡市仏教会長で祇陀寺(ぎだじ)の吉田大信(だいしん)住職は「県外からの参列は見送り、(県内の)家族や親族だけの葬儀が増えている」と現状を説明。一周忌などに合わせ、改めて別れの機会が設けられることもあるという。ただ家族葬が良いとは思わない。「葬儀は関わりのあった人が今生の別れをする場。お悔やみを言い、手を合わせる機会を奪ってしまう」ためだ。コロナ禍で葬儀の在り方も問われている。

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