踏ん張るとペンギン〝ふん射〟1.34メートル 飼育員悩み、研究者調査

友好紙 夕刊

 ペンギンの“ふん射”を逃れるには最低1・34メートルのソーシャルディスタンスが必要-。そんな内容の高知大研究者の論文がユニークな科学研究などに贈られるイグ・ノーベル賞の創始者の目に留まり話題を集めている。高知新聞(高知市)の双方向型報道「なるほど!こうち取材班」に情報が寄せられた。研究者に接触して話を聞いたところ、研究のきっかけは桂浜水族館(同市)の飼育員との何げない会話だった。

 研究者は高知大理工学部特任助教の田島裕之さん。静岡県生まれで、慶応大を卒業後、理化学研究所を経て昨秋、高知大に赴任した。

 「物理や化学を身近に感じてほしい」と、高知に来てすぐに動画投稿サイトユーチューブ」にチャンネルを開設。「ドクター・タージー」を名乗り、桂浜水族館とコラボして飼育員とリクガメが走る速さを競う企画などを配信していた。

 そんなある日、フンボルトペンギンの飼育を担当する藤沢史弥さんから「ペンギンのふんがめっちゃ飛ぶ。ふん害を免れるにはどうしたらいい?」と質問を受けた。ペンギンは子育て中、巣にこもるため排便の際は巣を汚さないように遠くへ飛ばす。それが飼育員をひどく悩ませていた。

 ペンギンがふんを飛ばす際の直腸圧力については、海外の研究者が論文を発表し、2005年のイグ・ノーベル賞を受賞。巣から広がるふんの痕跡の長さ、巣の地上高、ふんの粘着性から、「排出時の直腸圧力は10~60キロパスカル」と算出した。タイヤの空気圧の半分に匹敵し、人間の排便時よりかなり高い数値だという。

 ただ、田島さんは「この研究ではふんが飛ぶ軌跡までは考慮されていない」と判断し、物理学の定理や方程式を組み合わせて再計算。ペンギンがおなかを壊してふんが「完全流体」であることを前提とし、ふんが飛び出す際の角度などを検証した結果、最大飛距離は1・34メートルに達する可能性があることが分かった。

イグ・ノーベル賞創始者も注目

 この研究を論文にまとめ、今月ネットで公開したところ、イグ・ノーベル賞創始者のマーク・エイブラハムズさんが「ペンギンの“ふん射”について新しい知見が寄せられた」と、運営するサイトに田島さんの論文を紹介した。

 英国の新聞も相次いで記事を掲載。デーリー・メール紙は新型コロナウイルス対策に引っ掛け、「最近はソーシャルディスタンスを保つように言われるが、ペンギンとの距離は1メートルでは十分ではないことが日本の専門家による研究で分かった」と取り上げた。

 田島さんは、論文の共著者として藤沢さんの名も記した。研究のヒントやペンギンの平均体重、体長などのデータを寄せてもらったからだ。田島さんは「高知でしかできなかった研究。桂浜水族館の名が世界で知られるようになればうれしい。身近なことを物理的に理解するのは寺田寅彦博士に通じる」と笑顔で手応えを語る。 (高知新聞)

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