幼少期の養育環境守れ 小児科医・白川さんが本出版 脳や情動 基盤形成 職場、地域で支援を

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 小児科医で福岡新水巻病院周産期センター長の白川嘉継さん(54)=福岡県水巻町=が「人生の基盤は妊娠中から3歳までに決まる」(東洋経済、1365円)を出版した=写真。25年以上、小児医療に携わってきた経験から、幼少期の養育の重要性を強調。そのためにも、親が子育てしやすい職場や地域の支援の重要性を呼びかける。白川さんに話を聞いた。

 白川さんによると、人の脳の約80%は胎児期から3歳までに完成し、情動をつかさどる中枢も基盤が出来上がるという。歯が生えそろう時期でもある。そこで3歳までは母親が子育てに専念すべきだという「3歳児神話」を唱える声もあるが「適切なケアができる養育者がいれば、母親でなくても子どもはストレスなく育ちます」と指摘する。

 「ただし、母乳を飲ませるなど母親にしかできないこともある。脳の特性上、視覚的変化に敏感な女性の方が、赤ちゃんの変化や危険に気付きやすい側面はあります。終始一緒にいる必要はないけれど、できるだけそばにいてほしい」

 もちろん、仕事の都合や家計の事情で時間が取れない現実もある。労働人口の減少で、経済や社会保障を支えるには女性の就労が不可欠だ。では、どうすれば親が子どもと過ごす時間を守れるだろうか。

 「今の職場は仕事重視の人の考え方で形成され、家庭や子どもを顧みない。意識の変革が必要です。病児保育が存在するのは、子どもが病気でも仕事を休めないから。私が顧問を務める助産院の院長は子どもが熱を出したら休みます。職員も子どもを連れてきていいことになっている」

 そうした職場環境が整えば、母親だけでなく、父親も主体的に子育てに関われる。それは著書で紙幅を割いた「愛着関係」にもつながってくる。愛着とは「困ったときにこの人は助けてくれる」という信頼関係。家庭でいえば、親が「安全基地」になることで、子どもは他人との信頼関係を結べるようになるという。

 「あるストレスを与え続けると、病気になる人と、ならない人がいる。その差はレジリエンス(元に戻す力)。根底には愛着が深く関わっていると考えられています。幼少期に大切にされて愛着を形成できている人は、レジリエンス、つまり困難を乗り越える能力が高いのです」

 現実には、児童虐待が後を絶たないなど親子の絆の希薄化が叫ばれ、背景には地域で孤立した親の“孤育て”も指摘されている。そこで白川さんは、家庭を支える地域社会の「育児力」にも言及する。

 「出産直後に『赤ちゃんが抱けない』『泣くのが怖い』という母親は珍しくありません。子どもが何を要求しているか、適切なケアはどうするか。育児は練習すればできるようになる。それをそばで見守り、アドバイスする助産師や保育士の役割も重要です」

 少子化の時代、子は宝であり、育てる親も支えなければならない。白川さんは「社会が、子どもを大切にすることが投資になると気付くべきです」と訴える。

 ▼しらかわ・よしつぐ 福岡新水巻病院周産期センター長、みずまき助産院ひだまりの家顧問。小児科医として新生児や未熟児、情緒障害児、発達障害児の医療に携わる。約4万7000人の新生児を検診し、面接した家族は2万2000世帯を超える。福岡県出身。

=2014/01/18付 西日本新聞朝刊=

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