【こんにちは!あかちゃん 第13部】「保育の質」って何?<1>「公」と「民」一長一短

保育士が読む紙芝居に熱中する「あいあい保育園」の子どもたち 拡大

保育士が読む紙芝居に熱中する「あいあい保育園」の子どもたち

 《産み、育てやすい社会環境に欠かせない保育所。喫緊の課題は待機児童で、国や自治体は「量」の確保を急ぐ。そこで民間を活用しようとすると、同時に「質」の低下を懸念する声が聞こえてくる。本当に「民より公」なのか。そもそも「保育の質」って何? 現場を訪ねた》

 「目が行き届くの?」「保育内容が変わると子どもが混乱しそう」…。2011年、福岡市直営だった認可保育所「大井保育園」が社会福祉法人に移管される際、親に不安が広がった。

 04年に公立保育所の運営費が一般財源化され、予算削減による民営化が加速する。福岡市も21施設のうち11施設を社会福祉法人に移管。保育士は公務員でなくなり、保育内容は法人ごとに検討されるようになった。

 実際に移管して親はどう感じたのか。民営化前から長女を通わせる母親(46)は「楽器を使った活動など、民間ならではの柔軟性や個性もあっていいですね」と不満はなさそう。園側も不安を解消しようと定期的に意見交換会を開き、行事や保育内容への要望に耳を傾けてきた。園長の有松宏さん(66)は「公立のころと変わらず信用してもらっているようです」と話す。

 《認可保育所には公立、民営にかかわらず、保育士数や面積に一定の基準がある。保育料も自治体が定めるので差はない。保育問題に詳しい日本総研の主任研究員、池本美香さんは「設置主体別の客観的な質の検証はされていない」と指摘する。では、会社運営はどうだろう》

 夕暮れ時、お迎えに来た母親に保育士が声を掛ける。「今日はニンジンをたくさん食べましたよ」。母親は仕事の疲れを一瞬忘れ、顔をほころばせた-。

 10年に開設された福岡県志免町の「あいあい保育園」。株式会社の認可保育所は県内唯一だが、親と保育士のやりとりや園の雰囲気は公立や法人運営と何ら変わらない。公立で勤務経験のある保育士(31)に聞いても「子どもと向き合う姿勢は変わりませんよ」と返ってきた。

 ところが、全国の認可保育所のうち会社運営は12年4月時点で2%に満たない。九州でも志免町のほかは、長崎県壱岐市、大分県佐伯市だけだ。08年に約30施設を運営していた企業が突然閉鎖させたこともあり、参入に慎重な自治体は少なくない。

 倒産や利益優先の懸念もある中、志免町が評価したのは「高いノウハウ」。あいあい保育園を運営する株式会社「テノ.コーポレーション」には保育施設運営の実績がある。全国最多だった待機児童を昨年4月時点でゼロにした横浜市も、認可保育所の3割を株式会社が運営。「資金調達力があり、経営判断も早く、即効性が期待できる」として参入を促してきた。

 「会社が運営しているとか意識したことはありません。様子を丁寧に伝えてくれるので安心です」。あいあい保育園に2人の子を預けている母親(36)の言葉が印象に残った。

 《それぞれ一長一短あり、池本さんも「保育の中身や財政面を保護者や外部機関がチェックする態勢、閉鎖などに備えたセーフティーネットづくりの方が重要」と提起する。基準を満たしている以上、運営元だけでは一概に「質は民より公」とはいえないようだ。次回22日付では認可保育所の質を担保してきた「最低基準」について考えたい》

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 【ワードBOX】認可保育所

 子ども1人当たりの保育室の面積や保育士数など一定の基準を満たし、都道府県や政令市などが認可した施設。昨年4月時点で約2万4000カ所ある。運営費は世帯収入などに応じて保護者が払う保育料のほか、国や自治体が負担する。


=2014/01/21付 西日本新聞朝刊=

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