【こんにちは!あかちゃん 第13部】「保育の質」って何?<3>保育士の待遇改善 急務

保育士の現場研修で相談に応じる「いろどり真愛保育園」の安徳尊博さん。「子どもの成長と向き合うやりがいのある仕事ですよ」と話す 拡大

保育士の現場研修で相談に応じる「いろどり真愛保育園」の安徳尊博さん。「子どもの成長と向き合うやりがいのある仕事ですよ」と話す

 《子どもの育ちを間近で見守る保育士。厚生労働省は、待機児童に対応して保育所の定員を拡大すると、2017年度末には7万4千人足りなくなると推計する。「保育の質」に直結するだけに、対策が急がれる》

 「子どもの成長はそれぞれだから焦らないで」。福岡市近郊の認可保育所。昨年4月、二十数年ぶりに職場復帰した女性保育士(52)が親の相談に優しく応じる。2人のわが子を育て上げた経験が、若い保護者に安心感を与えているようだ。

 大学を卒業して保育士資格を取り、認可保育所で5年間、勤めた経験がある。結婚を機に現場を離れていたが、人手不足に悩む保育所側から声が掛かった。当初は離乳食の取らせ方など変わっている点が多く、体力的な不安もあった。今は「若い保育士にも支えてもらい、自信がついた」と張り切っている。

 資格がありながら離職している人を「潜在保育士」と呼び、各地に復職支援の取り組みが広がっている。支援センターを設置している自治体もあり、九州で最も待機児童が多い福岡県は昨年7月に開設した。

 ブランクの不安を取り除こうと現場研修も実施している。受け入れ先の一つ「いろどり真愛保育園」(福岡県福津市)の園長、安徳尊博さん(36)は「子どもと実際に触れ合ってみて、仕事のやりがいを再認識する人が多いようです」と話す。これまでに約40人が登録し、14人が復帰を果たしている。

 ただ、求人は70ほどの保育所からあり、供給が追いつかないのが実情という。

 《潜在保育士は全国に60万人以上いるとされる。しかし、思ったほど復職は伸びず、若手の離職者も後を絶たない。背景の一つにあるのが待遇面。厚労省によると、平均給与は月21万円程度で、全業種平均より10万円ほど少ない(2012年)》

 初めてトイレでおしっこができた瞬間に立ち会い、思わず手をたたいた。福岡県内の認可保育所に勤める男性保育士(24)は「そんなとき、何よりやりがいを感じます」と目を細める。

 同時に身が引き締まる。4人で1歳児20人を担当する緊張感もさることながら、子どもの成長を支える重責を痛感するからだ。それでも給料は、手取りで月15万円。家に持ち帰っての書類作成、行事の前の休日出勤は日常茶飯事。仕事は好きだが、将来を考えると「結婚して子どもが生まれたら生活していけるだろうか」と不安を覚える。

 なぜ待遇が低いのか。福岡女子短期大学保育学科教授の尾花雄路さんは「保育はもともと女性が家でやっていた家事の延長という見方が強く、専門職としての認識が薄い」と指摘する。

 認可保育所の運営費は国や自治体の補助と保育料で賄われ、人件費が7~8割を占める。保育所には定員があり、それ以上の増収は見込めない。賃上げはままならず、人数を増やそうとすれば非正規雇用に頼ることになる。尾花さんは「人の土台づくりに関わる仕事にふさわしい評価をすべきです」として補助金の増額を訴える。

 《三つの保育所に預けた経験のある母親(31)が「保育士の様子が子どもに伝染してしまう」と話していた。気持ちよく働いてもらうには、補助金増額はもちろん、子育てしながらでも続けやすい職場環境を整えるなど、保育所側にも自助努力が求められる。その保育所を管理・運営する自治体の役割はどうか。次回24日付で考えたい》

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 【ワードBOX】保育士

 児童福祉法に基づく国家資格。保育施設で子どもを保育したり、保護者に保育指導をしたりする。資格取得には厚生労働大臣が指定する短大・大学などの養成施設を卒業するか、保育士試験に合格する必要がある。厚生労働省によると保育士は約120万人(2013年)、認可保育所で働くのは約40万人(11年)。


=2014/01/23付 西日本新聞朝刊=

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