【人の縁の物語】<51>ペットとお墓でも一緒 合葬できる墓地広がる

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愛するリリーが眠る墓にお参りする阿部さん

 ペットの遺骨と一緒に納められる墓が人気を集めている。核家族化で老後の孤独感が深まる中、ペットを家族の一員として大切に飼ってきたお年寄りが、あの世でもそばにいてほしいと願ったり、現役世代がペットの供養の場を探したり、それぞれの事情があるようだ。

 小高い丘を寒風が吹き抜ける。福岡県宗像市の百合ケ丘霊園。7千区画、約10万平方メートルの広大な敷地の一角に、小さな石碑とともに立つ墓が並んでいた。

 「家族同然でした。きちんと供養してあげたくて」。15年飼った雌のシーズー犬「リリー」を5年前に亡くした阿部直也さん(74)。月2回以上、欠かさずに隣の福津市にある自宅から車で40分かけ墓参りする。

 会社員だった12年前、心筋梗塞で倒れて約2カ月半入院した。毎夕、リリーが玄関先で帰りを待っていると妻に聞き、胸が熱くなった。6年前に妻に先立たれてからは心の支えだった。

 リリーが病気で息を引き取ってからしばらくは、仏壇に遺骨を置いていた。その後、ペットと一緒に合葬してくれる百合ケ丘霊園のことを知り、迷わず購入。妻と先祖の遺骨も一緒に納骨した。もちろん、いずれ自分も入るつもりだ。「リリーのそばで永眠できる。あの世に逝くのが怖くなくなりました」。死への準備を済ませ、心は穏やかだ。

 火葬してから納骨するペットとの合葬は、10年ほど前に関東地方で始まったとされる。百合ケ丘霊園では2006年からペットと一緒に埋葬できる墓を販売。評判が広がり、少しずつ増設してきた。143区画のうち102が販売済み。安部順二所長(56)は「問い合わせが後を絶たない。空きがなくなればまた増設したい」と話す。

 09年から桜を墓標にする「樹木葬」を取り入れた福岡県桂川町の嘉麻郷霊園も2年前からペットの遺骨も埋葬できる区画を設けた。口コミで広がり、30区画の9割が売れているという。秋本修所長(63)は「ペットを飼っている30~40代のシングル層などが埋葬場所を探す中で、ペット専用の納骨堂では十分な供養ができないと考え、将来は自分も入れる墓を選ぶようになっている」と指摘する。

 少子高齢化や核家族化に加え、ツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が定着し、インターネットによる顔の見えない関係性が広がっている。

 西南学院大の宮原哲教授(コミュニケーション学)は「バーチャル(仮想現実)な人間関係で、いくらネット上での『友だち』が増えても真に心を共有できる友人は増えない。気持ちを分かり合える相手がいないという人間への不信感の裏返しが、ペットへの深い愛情になっている」と分析する。

 人間関係の隙間を埋める存在として、ペットの「家族化」はますます進みそうだ。


=2014/01/28付 西日本新聞朝刊=

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